球宴初出場。DeNA田中健二朗が亡き母に誓う全力投球

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

「去年までのことを考えたら、まさか僕がオールスターに出られるなんて思ってもみませんでした。毎年この時期はファームで練習していましたし、本当ビックリですよ」

 今シーズン、苦しみながらもセ・リーグ首位争いを演じている横浜DeNAベイスターズのセットアッパーとして欠かせない存在になった田中健二朗は、驚きを多分に含みながらそう語った。監督推薦により初めて夢の球宴に出場することになったが、一時はチームを支えた前半戦での好投が認められファン投票でも1位になっていた。

監督推薦でオールスター初出場を果たしたDeNAの田中健二朗監督推薦でオールスター初出場を果たしたDeNAの田中健二朗

「それは素直に嬉しかったですね。自分をそういった目で見てくれる人がたくさんいるんだって感じられたし、また頑張ろうという気持ちになりました」

 田中はそう言うと、少し表情をゆるめた。

 プロ8年目の田中は、2007年の選抜高等学校野球大会で常葉菊川高(静岡)のエースとして優勝投手となり、同年の高校生ドラフトで横浜ベイスターズ(当時)に1位指名され入団。高卒同期には中田翔(日本ハム)、唐川侑己(ロッテ)、由規(ヤクルト)の"高校BIG3"をはじめ丸佳浩(広島)、中村晃(ソフトバンク)、伊藤光(オリックス)などがいる。

 同期のライバルたちが一軍で華々しい活躍をする一方、甲子園優勝投手の田中は陽の目を見ることがなかった。昨年までの7年間で登板したのは先発、中継ぎを含め41試合で2勝4敗、防御率は4.45。この数字からもわかるように一軍と二軍を行き来する選手だった。いくらドラフト1位だとはいえ、5年以上も結果が出なければ戦力外通告を受ける可能性も高く、田中もそれを実感していた。

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