名手・駒田徳広が阿部慎之助に授ける「一塁手の極意」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 これまで私の野球人生の中で、最も素晴らしいと思うのが、1998年に日本一を達成した横浜(現・横浜DeNA)の内野陣です。私がファーストを守り、セカンドがローズ、サードが進藤達哉、ショートが石井琢朗。何が素晴らしかったかといえば、サインで動くのはなく、アイコンタクトでプレイしていたことです。相手が何か仕掛けきそうだと思って他の選手を見たら、ちゃんと目が合うんです。そこで「こうしよう」と無言で確認をする。相手にしてみれば、サインがないのにみんな動くわけですから、すごく嫌だったと思いますよ。

 とにかく、ランナーを簡単に進塁させないためにはどうすればいいかを常に考えてやっていました。98年の横浜の内野陣は、特にその意識が強かったですね。私もファーストを守っていて、一塁ランナーのリードをどうすれば小さくできるか、スタートをどうすれば遅らせることができるか、そういうことばかり考えていました。

 私が実践していたのは、相手三塁コーチャーのサインの出し方や、一塁コーチャーのアドバイスの仕方をとにかく観察するということです。サインの出し方ひとつにしても、前に出ていきながら出す時と、後ろに下がりながら出す時がありますし、足の位置によっても違いが出てきます。ずっと見ることによって、本当のサインを出した時と、ニセのサインを出した時の違いがわかってきます。

 そういう時は、バッテリーに「ランナー走るよ」という合図を送ったり、わざとランナーに聞こえるように言ったりします。警戒されているのがわかると、ランナーのスタートも悪くなりますから。もちろん、まだファーストを守って間もない阿部選手にこれらのことを求めるのは酷かもしれませんが、少しでも高い意識を持って守ってほしいですね。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る