巨人ドラフト1位・岡本和真のスラッガー育成法を考える

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 10月28日、巨人から1位指名を受けた岡本和真(智弁学園)が指名あいさつの席で手渡されたのは、原辰徳監督直筆の色紙だった。そこには「歴史を変えよう! 待ってます!」というメッセージが記されていた。提示された背番号は、長嶋茂雄氏と原監督の現役時代の番号を合わせた「38」。新聞などでは「将来の4番」といったフレーズが並ぶなど、期待の大きさをうかがわせる。

巨人から1位指名を受けた岡本和真巨人から1位指名を受けた岡本和真

 岡本は今年の春、夏と甲子園連続出場を果たし、センバツ初戦の三重戦ではバックスクリーンへの特大の一発を含む1試合2本塁打。観客の度肝を抜いた。183センチ、95キロのがっちりした体躯から高校3年間で放った本塁打は73本。数字を見る限り、豪快なイメージが先行してしまうのだが、県大会や近畿大会など、各大会では常に4割から5割の打率を残し、四球もしっかり選ぶ。決して、力自慢の一発屋ではない。

 ただ、巨人では「中田翔以上の逸材」との声もあった大田泰示が苦労しているように、高卒のスラッガー育成は簡単ではない。過去の高卒ルーキーたちの姿を思い返しながら、岡本の育成法について考えてみた。

 たとえば、岡本が好きな選手のひとりに挙げる中村剛也(西武)は大阪桐蔭時代、甲子園出場は果たせなかったが高校通算83本塁打を記録し、"ナニワのカブレラ"の異名を取った。大阪桐蔭の西谷浩一監督に高校時代の中村について聞くと、次のような答えが返ってきた。

「打率が高く、とにかく三振をしない。空振りを見た覚えがありません」

 今のスタイルとは重ならないが、そのことについては「プロの世界で求められるものを本人が感じ、考え方もスタイルも変わっていったのでしょう」と話す。つまり中村自身、ホームランへの意識をより強め、三振や空振りは「しょうがない」とある意味、割り切ったというのだ。

 1年目はファームで打率.215、7本塁打、28打点だったが、2年目は22本塁打を放ち、イースタンリーグの本塁打王に輝いた。4年目に一軍初本塁打を放つと、5年目には22本塁打で一躍頭角を現す。その後、本塁打王5回、打点王2回を獲得するなど、日本を代表するアーチストへと成長した。

 では、岡本はプロに入ってからどんなタイプの打者を目指していくのか。ドラフト直後の会見では「いずれはホームラン王を獲りたい」と抱負を語ったが、これまで何度か取材した中で口にしていた未来図はこうだった。

「まず3割は打ちたいです。ホームランは40本とか打てるようになればいいですけど......理想は3割を打って、ホームランは20本台をコンスタントに打てるような選手です」

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