巨人投手陣を救う。小山雄輝を急成長させたノート

  • 高森勇旗●文 text by Takamori Yuki
  • photo by Nikkan sports

 運が強い、と巨人の小山雄輝(こやま・ゆうき)は言う。

「交流戦のローテーションの谷間で、一軍に上がって初勝利。その後も谷間で投げていたら、内海(哲也)さんがケガをしてそのままローテーションに入れた。高校、大学時代(※)も、先輩がケガをしたきっかけで試合に投げられるようになった。運が強いんだよね、オレ」
※大府高校(愛知)、天理大学

シーズン途中からローテーション投手として活躍し、今季6勝をマークした小山雄輝シーズン途中からローテーション投手として活躍し、今季6勝をマークした小山雄輝

 5月25日、日本ハムとの交流戦で今季初登板初勝利を挙げると、その後も交流戦の優勝がかかった試合に先発して勝利。交流戦通算3勝0敗、防御率1.33の成績を残し、好調だった2位・広島を突き放す原動力となった。その後は先発ローテーションの一員として安定した投球を続け、マジック6で迎えた9月20日のヤクルト戦では、8回を5安打1失点に抑えマジックをひとつ減らす快投を見せた。試合後、原辰徳監督に「いま一番安定感がある」と言わしめ、岡崎郁二軍監督も「今年一番成長した選手」と舌を巻くほど、今年の小山は成長著しい。入団4年目。昨年までの3年間で23試合に登板し2勝2敗だった男に、どんな変化があったのか。

 キャンプイン前、小山は青島神宮(宮崎県)の絵馬にある誓いを書いた。

「"奪取"。今年は、なりふり構わず奪いにいく」

 今後の野球人生において、今年の成績次第では来年プレイできない可能性があることを十分に理解していた小山の心は、危機感に支配されていた。キャンプ地を宮崎から沖縄に移動して行なわれた二次キャンプ。韓国チームとのオープン戦に先発した小山は序盤から打ち込まれ、早々にマウンドを降りた。そして待っていたのは、二軍落ちだった。

「試合中に宮崎行きのチケットを渡された。今すぐ宮崎へ行けって。まだみんなが試合をしている中、あいさつもできないまま球場を出て、那覇空港へ向かった」

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