秋山監督辞任を乗り越え、ソフトバンクは再び輝けるか?

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 電撃発表だった。10月14日、クライマックス・シリーズ(CS)ファイナルステージの開幕を前日に控えたこの日、ソフトバンクの秋山幸二監督が緊急会見を開き、今季限りでの退任を発表した。「一軍の監督を務めて6年。二軍監督、コーチを含めると10年ということで、自分の中で区切りをつけたいと思っていました」と、会見の中でその理由を語った。

勝てば優勝が決まる10月2日のオリックス戦に先発して好投した大隣憲司勝てば優勝が決まる10月2日のオリックス戦に先発して好投した大隣憲司

 ソフトバンクのナインは全員と言っていいほど、当日朝の報道を通じてその事実を知った。「本来ならば明日からCSが始まるところ。本意ではない。自分の中でも困っている」と秋山監督。その上で「雑音をシャットアウトしたかった」と、この日の全体練習を前にコーチ、選手、スタッフを集め自らの口で退任を打ち明け、王貞治球団会長とともに「明日から集中して戦おう」と改めてチームの結束を確認し合った。

 内川聖一は「朝、嫁に起こされてびっくりしました」と話し、「何もなく普通に(CSを)迎えられたらよかったですが......」と少なからずの動揺も感じさせた。しかし、秋山ホークスの主軸として働き続けたヒットマンは、秋山イズムを体現しようと努めていた。

「監督がはっきりと『雑音を封じて』と口にしたというのは、僕ら(選手)はその思いを理解してきちんと気持ちの整理をつけて、明日から臨まないといけないという意味だと思います。日本一を目指すという目標は変わらないし、『監督のために』というのは自然となっていく。僕らがバタバタしてしまうとチームとして上手くいかなくなってしまうので、15日球場に来るまでにしっかり整理してきます」

 この出来事を予期したわけではなかったが、内川は前日にこのような話をしていた。

「すべてが予定通りにことが運ぶわけではないですからね。プラスに捉えないと」

 すでに想定外の出来事は起きていた。ソフトバンクはCSに向けた調整として、宮崎で行なわれているフェニックスリーグに参戦して4試合を行なう予定だった。しかし、先頃の台風19号の影響を避けるため、たった1試合だけで福岡にとんぼ返りせざるを得なかったのだ。その後、本拠地ヤフオクドームで紅白戦を2試合行なったが、一部選手からは「実戦勘を取り戻すという意味では痛いですね」という声も聞かれた。

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