メッセ&能見、巨人撃破へ1年越しの思いを語る (3ページ目)

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 一方の能見は、昨年、マウンドに上がることなくCSを終えた。第3戦の先発が予想されていたが、チームが連敗したため能見の出番はなくなった。「エースを使わずに負けるなんてあり得ない」。そんな声が聞こえたのは、評論家諸氏からだったか、阪神ファンからだったか。

 1年が経ち、能見に聞いてみた。「去年、3戦目の先発と言われたとき、『なぜ?』の思いはなかったのか」と。

「何でですか?」

 能見からは、そんな答えが返ってきた。

「3戦目が一番、プレッシャーがかかるじゃないですか」

 確かに、そうだ。第3戦があれば、それは確実に「勝つしかない」一戦。首脳陣から登板日を告げられたとき、能見はそう解釈して納得したのだと言う。ただ、最初から3戦目を予想していたわけでもない。

「初戦もあるとは思っていましたけど、特にどこを想定していたというのはないですね。言われたところで投げるだけですから。藤浪の初戦? それも『あり』だと思っていましたよ」

 いつも通り淡々とした口調で、表情を変えることなく1年前を振り返った能見。「短期決戦のアタマはエースで取りに行く」という発想をぶつけてみても、「それはチームの事情であって、僕が決めることじゃないので」と一蹴された。

「初戦に意味があるのは(レギュラーシーズンの)開幕だけでしょう。普通は、開幕投手を中心に1年回していくものですから」

 正直、本心かどうか測りかねた。体調面に不安を抱えていたという話もあるが、結局、何もできずに終わった昨年のCSが、能見の中に何らかの形で残っていたのではないか、という思いは消せなかった。ただ、そのポーカーフェイスはマウンド以外でも崩れることはなく……。

 今年のCS、能見は第2戦の先発投手を務めた。初戦に勝っていたため、レギュラーシーズン2位の阪神は、引き分けでもファイナルステージ進出を決めることができた。

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