横浜の渡辺監督とはベテラン漫才師みたいな関係だな

  • 柳川悠二●取材・文 text by Yuji Yanagawa
  • 大友良行●撮影 photo by Yoshiyuki Ohtomo

横浜高校の名参謀・小倉清一郎の人生(1)

 神奈川大会・準決勝、好投手4人を揃えた東海大相模の前に、3-5で敗れた瞬間、バックネット裏に陣取っていた小倉清一郎(きよいちろう、69歳)は重い腰を上げた。大勢の報道陣を引きつれ、ナインの元へ急ぐ途中、神奈川県の高校野球関係者、そして横浜高校のファンが「お疲れさまでした」と声をかけ、頭を下げていく。

 練習グラウンドを整備する小倉コーチ。鋭い眼光、そして、明晰な分析力はまったく衰えなし練習グラウンドを整備する小倉コーチ。鋭い眼光、そして、明晰な分析力はまったく衰えなし

 1990年から24年もの間、全国屈指の名門にして多くのプロ野球選手を輩出してきた横浜高校で、甲子園通算51勝を挙げている渡辺元智監督を部長として、後年はコーチとして支えてきた。名参謀として高校球界に名を轟かせてきたその小倉が、この夏の神奈川大会準決勝をもって勇退、横浜高校を離れた。

「特に感慨はないな。もちろん、最後は甲子園で終わりたかったけど、こればかりは仕方ない。だって、選手が指示通りに動かないんだもん。(東海大相模戦でも)投げるなと伝えていたコースにピッチャーが投げて、逆転されたわけだからさ。(プロ注目の横浜高校スラッガー)高濱祐仁にしても、相手投手が内角攻めから一転して、外一辺倒の配球に変わったのに、それに対応できない。プロでは厳しいかもな。オレがベンチに入っていたら、指示も出せるんだけど、コーチではベンチに入れないから。ベンチに入れなければ、陸に上がった河童です」

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