日本一のセットアッパーへ。佐藤達也が見る8回の風景

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 8回を投げる――それがセットアッパーの仕事である。

 バファローズを支えるリリーフ陣にあって、8回を任されている3年目・佐藤達也の存在感は際立っている。

「本心を言うと、8回ってあんまり投げたくないんです(苦笑)。だって、馬原さんに7回を抑えられた相手は、9回に平野さんがくるとなれば、チャンスは自分が投げる8回しかないという気持ちでくると思うので......そういうプレッシャーは常に感じています」

8月4日現在、チーム最多の44試合に登板している佐藤達也。8月4日現在、チーム最多の44試合に登板している佐藤達也。

 佐藤がマウンドに上がると、ロードオブメジャーの『心絵』が流れる。ご存じ、テレビアニメ『メジャー』のオープニングテーマである。
 
 佐藤が描いた夢と、ここにある今は、どう違うのか。先発として投げる夢を描きながら、形をかえて、リリーフとして 投げている今の自分を見比べて、それも確かなひとつのもの。そんな意味を込めた選曲なのかと思いきや、佐藤はサラッとこう言った。

「プロ1年目、一軍に上がった時にはもう決まっていたんです(笑)。だから自分で選んだわけじゃないし、先発とかリリーフとかを考えてたわけでもなくて......すみません(苦笑)。ただ、漫画の『MAJOR』も全巻読みましたし、ファンのみなさんからも好評なので、それでいいのかな、と......」

 7月29日の神戸、バファローズとライオンズの一戦。

 この日は、バファローズのクローザーを務める平野佳寿が球団史上初の2年連続30セーブをマークしており、そのことばかりが報じられていた。しかし、試合の流れを決定づけたのは、8回の佐藤のピッチングだった。

  先発の松葉貴大が苦しみながらも粘って、7回を2点に抑える。6回までライオンズの牧田和久に抑えられていた打線が7回裏につながり、T-岡田の同点打、 ウィリー・モー・ペーニャの勝ち越しツーランでバファローズが一挙4点を挙げ、4-2と試合をひっくり返した。そして迎えた8回表――佐藤はこうも言っていた。

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