「田中ロス」。今、楽天に何が起こっているのか?

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 6月14と15日、コボスタ宮城(旧・Kスタ宮城)で楽天と巨人の交流戦が行なわれた。仙台でのこのカードは昨年の日本シリーズ以来で、試合前練習では楽天の米村理外野守備走塁コーチの大きな声がチームに活気をもたらしていた。キャッチボールをしている藤田一也には、「一也、頼むで。今日のジャイアンツ戦」と。そして外野守備練習を終え、ベンチに引きあげてきたジョン・ボウカーにも日本語で「ジョン! 今日はツーホームラン頼むで! 古巣のジャイアンツを見返したりや!」と一気にまくしたてた。これにはボウカーも苦笑いするしかなかった。

田中将大の抜けた後、エースとしてチームを引っ張る則本昂大。田中将大の抜けた後、エースとしてチームを引っ張る則本昂大。

 練習を眺めていると、昨年からいろいろな変化があることに気づく。日本シリーズ用に増設された仮設スタンドは正式な観客席となるために工事中。また、バックスクリーン上部には、新球場名称「コボスタ宮城」の大きな立体看板が作られ、一塁側スタンド上部には田中将大(ヤンキース)を起用した企業の大きな看板が新たに設置された。その看板は田中がリラックスした表情でソファに腰を掛けており、まるで楽天の試合を見ているかのようだ。

 だが、チームは田中の抜けた影響か、6月17日現在、24勝37敗でパ・リーグ最下位に沈んでいる。しかも、闘将・星野仙一監督は腰の難病により休養中という非常事態。藤田は現状のチームについてこう語る。

「正直、借金が10以上あるというのは、昨年では考えられない数字だと思っています。今年は投打のバランスがどうもかみ合わないんです。ピッチャーが抑えている時には打線が点を取れない。打線が点を取れば、投手陣が崩れてしまう......。今年はそういう試合が多い気がします」

 昨年、楽天はリーグ1位となる36試合の逆転勝利を飾った。地元ファンから"東北逆転イーグルス"と誇らしげに呼ばれるほどの粘りを見せていた。しかし、今年は逆転した試合はわずか5試合(リーグ最少)。6回終了時でリードを許した試合は、なんと1勝34敗。逆転のイーグルスの面影はない。

「僕自身のことでいえば、記録上はエラーになっていない小さなミスが多いんです。昨年は守備でリズムを作って、それが打撃にもつながっていました。でも今年は、そうした流れが少ない。結果的に、自分もなかなか乗っていけてないですし、投手陣をうまく乗せることができていないですね」(藤田)

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