もはや日本のエース。解説者7人の「金子千尋論」 (2ページ目)

  • スポルティーバ●構成 text by Sportiva
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

◎野田浩司(元阪神、オリックス)

 ピッチャーというのは、キャンプ中にしっかり投げ込みをしてシーズンを迎えるのですが、金子はほとんど行ないません。昨年も、キャンプ中はずっと二軍でマイペースの調整を続けていましたが、開幕までにしっかりと仕上げてきました。投げ込みをしなくても、体を作る術を知っているのでしょう。

 それに、先発投手は登板のあと次投げるまでに5~6日ほど空きますが、その間、2~3回ほどブルペンで投げ込みをするのが普通です。でも、金子は1回しかしないと聞いたことがあります。シーズン中の投げ込みというのは、フォームの微調整やバランスの確認が主な目的なのですが、金子はキャッチボールでそれができる。それだけ自分のフォームをしっかり確立している証拠です。だから、思い切り腕を振って投げてもしっかりコントロールできる。非常に再現性の高いピッチャーです。

◎野村弘樹(元横浜投手コーチ)

 ピッチャーというのは、力でねじ伏せて抑えるタイプと、投球術と制球力を駆使して抑え込むタイプの2通りあると思うのですが、金子は本格派と技巧派の両方を兼ね備えたピッチャーといえます。いい意味で自分のピッチングというものを確立していないから、逆にバッターとしては狙い球を絞りにくい。おまけにコントロールも抜群で、投げミスがほとんどない。まさに難攻不落の投手と言えます。

 あと彼に足りないのは、大舞台の経験だけです。クライマックス・シリーズ、日本シリーズの経験がなく、日本代表メンバーに選ばれたこともない。シーズン中のピッチングは申し分ないのですが、大舞台でどれだけの投球ができるのか。本当の意味で彼の実力を知るのは、その時かもしれません。

◎与田剛(第2回、3回WBC投手コーチ)

 ストレートの威力、変化球のキレ、コントロール、スタミナ、フィールディングと、投手に必要なものすべてを兼ね備えたピッチャーといえます。さすが昨年、沢村賞の受賞基準である7項目(登板25試合、完投10、15勝、勝率6割、200投球回、150奪三振、防御率2.50以下)すべてをクリアしただけのことはあります。田中将大が24勝0敗という驚異の記録を残したおかげで沢村賞受賞はなりませんでしたが、誰も文句を言えないピッチングだったと思います。

 金子については、多彩な変化球とコントロールの良さが言われていますが、ストレートこそ一級品なんです。球速は140キロ台中盤がほとんどなのですが、見た目以上に強さがある。特にベース上で加速していくイメージがあり、打者は前に飛ばすのが大変だと思います。いくら多彩な変化球があっても、ストレートにキレがないと宝の持ち腐れになってしまう可能性があるのですが、金子はストレートを軸に投げることができる。だからこそ、多彩な変化球が生きてくるわけです。

 このまま無事にシーズンを終えればFA権を取得します。もしFA宣言するようなことになれば、間違いなくオフの目玉になるでしょう。

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