ロッテ・石川歩は大学時代、自らの才能に気づいていなかった

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 去年の秋、ドラフトが終わった頃、いろいろなテレビやラジオ、週刊誌から、ドラフトの結果について取材を受けた時期があった。

 多くのメディアが、広島に1位指名された九州共立大の大瀬良大地を盛んに持ち上げていた。大瀬良は広島、阪神、ヤクルトの3球団が指名に、担当する広島の田村恵スカウトがクジを引き当てたことで大きな話題になっていた。

ここまで9試合に登板して4勝2敗、防御率2.95の石川歩。ここまで9試合に登板して4勝2敗、防御率2.95の石川歩。

 大瀬良も間違いなく"大器"である。単にドラフト1位投手というだけじゃない。何度も話をしたし、彼の剛球を受けた者として、将来のエースはもちろん、重要ポストを任せられるだけの、人としての器の大きさを感じたものだった。しかし、投手としてはどうか。

「大瀬良投手は1年目から10勝しても全然不思議ではない。でも、彼のボールゾーンの高さを考えると、8~10敗がついてくるかもしれない。反面、同じ10勝でも、5敗で済ませることができるのがロッテから1位指名された石川歩だと思います」

 取材に対して、私はこういう答えをしていたが、そのたびに相手にショボンとされて、こちらのほうが困ってしまった。でも、本当だからしょうがない。当時の石川のネームバリューなら仕方なかったのかもしれないが、こういう時の推薦者の気持ちは結構さみしいものである。

 東京ガスの石川だって、ロッテの他に、あの巨人が1位に指名してきた快腕である。それだけの力量は十分に備えている本格派右腕である。ただし、活躍しはじめたのがつい最近のことだったから、みんな彼を知らなかった。

 そりゃそうだ。学生の頃の彼は、素晴らしい素質を持ちながら、まだ自分の潜在能力に気づかない、なんとも頼りない青年だったのだから......。

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