田中将大を大エースへと導いた「プロ2年目の失敗」

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

エースの響き~ブルペン捕手・中谷仁が見た「超一流の流儀」
田中将大(1)

 みなさん、はじめまして。一昨年まで巨人でプレイしていたキャッチャーの中谷仁です。私は1998年に阪神に入団して以来、たくさんの投手のボールを受けてきました。阪神の同期には井川慶(現オリックス)がおり、ひとつ下には高校時代から親交があった藤川球児(現カブス)。2006年に楽天に移籍してからは岩隈久志(現マリナーズ)に、今年メジャーデビューを果たした田中将大(ヤンキース)。2012年に移籍した巨人では内海哲也、杉内俊哉、菅野智之......一流投手たちのボールが収まるミットの響きは、プロ野球の世界から離れた今でも忘れることはありません。そんな彼らは、なぜ一流投手となることができたのか。実際に彼らの球を受け、一緒に過ごしてきたからこそ見えてくることもあります。ここでは一流投手たちの素顔にふれ、彼らから感じてきたことを紹介できればと思います。第1回目は日米の野球界が注目している田中将大です。

昨年、前人未踏の開幕24連勝を記録した田中将大。昨年、前人未踏の開幕24連勝を記録した田中将大。

 マー君(田中将大)がドラフト1位で入ってきた2007年の1月。Kスタ宮城(現・コボスタ宮城)の室内練習場で新人合同自主トレが行なわれていました。この時、初めてマー君を見たのですが、体格や雰囲気から「この選手は近い将来、楽天のエースになるだろうな。球界を代表する投手になるだろうな」という予感めいたものがありました。その時チームには岩隈久志(現・マリナーズ)という大黒柱がいましたが、彼に勝るとも劣らない雰囲気がマー君にはありました。

 でも、すぐに2ケタを勝つとは想像もしていませんでした(1年目の田中の成績は11勝7敗、防御率3.82)。これまで何人もの高卒投手のボールを受けてきましたが、なかには鳴り物入りで入ってきたけど、プロのレベルとしては厳しい選手もいました。もちろん、マー君は他の高卒投手とは違うだろうと思いつつも、どこかで「まだ高校生だからなぁ」という気持ちがあったのは事実です。

 そして迎えた楽天の久米島キャンプ。僕は、結構早い段階で彼の球を受けることができました。僕だけでなく、他の捕手たちも「捕りたい、捕りたい」という感じで、言ってみれば「お手並み拝見」といったところでしょうか。マー君は緊張した面持ちで、ストレートを中心に投げていたのですが、スライダーを受けた瞬間、驚きましたね。隣で見ていた藤井(彰人/現・阪神)さんも「えっ?」って、なっていました。

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