首位奪取へ。矢野、下柳、藪が叫ぶ「阪神投手陣再建論」

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 シーズン開幕前、阪神で心配されていたのは打線の方だった。オープン戦でレギュラークラスの状態がなかなか上がってこず、昨年悩まされた得点力不足を解消できていないと思われたからだ。

 一方の投手陣はといえば、先発の頭数が足りないとはいえ、昨季はリーグ1位のチーム防御率を誇っており(3.07)、しかも、唯一の弱点だったクローザーに韓国の絶対的守護神・呉昇桓(オ・スンファン)を迎えたことで、ある程度、計算が立つとされていた。

開幕の巨人戦で10失点KOを喫したエースの能見篤史。開幕の巨人戦で10失点KOを喫したエースの能見篤史。

 ところが、開幕するとまったく逆の目が出た。4月20日現在(以下同)、123得点はセ・リーグトップ、109失点はリーグ4位の数字。一時はチーム防御率が7点を超え、「投壊」と表現されたほどだ。4月11日の巨人戦あたりから持ち直し、防御率は4.94まで下がったが、それでもまだ悪い。

 この原因は何なのか? また再建策はあるのか。下柳剛、藪恵壹、矢野燿大のOB3氏にうかがった。

「そもそも、昨年からのプラス要素がなかった」と話すのは、長く虎の正妻を務めた矢野氏だ。

「先発は能見(篤史)、(ランディー・)メッセンジャー、藤浪(晋太郎)の3枚以外に不安を残したまま開幕しましたし、リリーフも含めて、若手がもっと伸びてくるだろうと期待されていたのが、伸びなかった。そこに、調子の悪さが重なったのもあると思います」

 若手の成長というプラス材料がなければ、ジェイソン・スタンリッジ(現・福岡ソフトバンク)と久保康友(現・横浜DeNA)の流出で、マイナスばかりになってしまう。呉が加入したといっても、9回までにリードしていなければ「宝の持ち腐れ」だ。

 2003年、2005年の優勝に貢献した下柳氏も、「力のないピッチャーを使わなきゃいけない状況だったから、こういう結果になるのは想定内。チャンスだと思って、もがいて、必死に取りに行く選手がいなかったのかなと思う。キャンプでも伝わってこなかった。本人がやるしかないのに、もったいない」と、伸び悩む若手に苦言を呈した。

 阪神のエースとして一時代を築いた藪氏は、投手継投に疑問符を付ける。「開幕戦で能見を引っ張り過ぎたところから、歪(ひずみ)が生じたのでは......」と言う。

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