巨人・菅野、ヤクルト・小川に捧げる「開幕投手の心得」

吉井理人の投究論 第11回

ヤクルトの開幕投手に決定した昨年の最多勝投手・小川泰弘。ヤクルトの開幕投手に決定した昨年の最多勝投手・小川泰弘。

 プロ野球開幕を来週末に控え、各チームとも開幕投手が決まってきました。まだ正式に決まっていないのは、楽天くらいですが、昨年の実績を考えると、ルーキーイヤーに15勝を挙げた則本昂大になるでしょう。

 144試合の最初に投げる開幕投手というのは、言わばチームの顔。開幕戦の戦い方によって、チームに与える勢いがものすごく変わってきます。開幕投手はそうした責任を背負うと同時に、ものすごく名誉なこと。とにかく自信を持って、シーズン初戦のマウンドに上がってほしいと思います。

 僕はメジャーリーグから日本球界(オリックス)に復帰した2003年、初めて開幕投手を任されました。3月中旬、監督の石毛宏典さんから言い渡された時は、本当に嬉しかったですね。いざその日を迎えると、ゲームが始まるまでの雰囲気がいつもと全然違いました。よく言われる、開幕独特の緊張感というものです。いい意味で、ピッチャーとして経験してみたい緊張感でした。

 開幕投手に選ばれると、いつも以上に「よし、やったろうか」という気持ちでマウンドに上がるものです。ただし、盛り上がりすぎると、逆に入れ込みすぎて自分をコントロールできなくなってしまう。どの登板日も気持ちは盛り上がるものですが、特に開幕は強くなります。気持ちのコントロールが一番重要になってきます。

 シーズン初登板を迎える日は、選手によって縁起のいいものを食べたり、ゲンを担いだりする人もいますが、僕はいつも通り普通に過ごしたいタイプでした。これも理由があって、特別な気持ちを見せないことがカッコいいと思っていたからなんです。いつもと同じように振る舞い、チームメイトが「今日、先発誰なん?」と疑問に思っているところで、「オレやで」ってさりげなく言う。内心は違うんですけどね(笑)。メジャーにいた頃はよく、「吉井が投げる日は、誰が先発ピッチャーなのかよくわかない」って言われていました。

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