バレンティンが語った「60本塁打、イチロー、そして......」

  • ブラッド・レフトン●text by Brad Lefton

 今季からウラディミール・バレンティンは、複数の守備に就く可能性がある。バレンティンは沖縄・浦添で行なわれているヤクルトの春季キャンプ地に、ファーストミットを持って登場した。過去6シーズン、日米通算546試合に出場したバレンティンだが、実は外野以外のポジションを守ったことは一度もない。そんな彼が、30歳を迎える今シーズン、足への負担を減らすために新しいポジションに挑戦している。しかしながら、一塁でボールを受ける姿や、投手との連係プレイなど、実に楽しそうな表情が印象的だった。これを見る限り、ストレスなくキャリアチェンジをしているように見える。

昨シーズン、49年ぶりに日本記録を塗り替える49本塁打を放ったバレンティン。昨シーズン、49年ぶりに日本記録を塗り替える49本塁打を放ったバレンティン。

 そのバレンティンだが、キャンプインできただけでも、幸せなことだった。今年1月、バレンティンはマイアミで別居中の妻に家庭内暴力(DV)を起こし、逮捕された。当初は、来日が遅れることはもちろん、日本に来られない可能性すらあった。だが、保釈金を払い釈放されたことで、キャンプ初日に間に合った。この決定が、再び彼のやる気に拍車をかけたのだった。

「みんなと一緒にキャンプを開始できることが、どれだけ大切なことか。というのも、ここではみんながチーム一丸となって物事を行なうことがルールなので、絶対に遅れたくありませんでした。初日からキャンプに参加することができて、非常に嬉しく思っています。今は野球に集中する時ですし、新しいゴールに向かって出発する気持ちでいっぱいです」

 バレンティンは、子どもの頃から愛した野球を奪い取られてしまうのではないかと、本気で心配したと告白した。

「この状況が続けば日本に戻れないのではないかと本気で思いました。僕は子どもの頃から野球に親しみ、野球選手の人生しか知りません。その大切なものがなくなりかけていたのです。だからこの問題に関して、とても熱心に対応してくれたスワローズ球団の方々には本当に感謝しています。ユニフォームを着た時、今まで以上に野球で頑張らなきゃと思いました。」

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