2年目にブレイクの予感あり。西武・相内誠に要注目

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

2014年注目のアスリートたち(5)

「普通に育てば、素晴らしいピッチャーになると思います。将来的な話で言えば、先発ローテーションに入ることができる。そのまま伸びていけばね」

 昨季序盤、西武の潮崎哲也二軍監督にある高卒投手について話を振ると、目を輝かせてそう話した。2012年のドラフトで西武から2位指名を受けて入団した、相内誠(あいうち・まこと)のことだ。

昨年はファームで6試合に登板した相内誠。昨年はファームで6試合に登板した相内誠。

 普通に育つ――。

 潮崎二軍監督は「順調にいけば」という意味で使っているが、違った文脈でとらえるファンもいるかもしれない。それほど、入団前に与えたインパクトは大きかった。

 ドラフト会議当日、民放の特番で特集され、中学生の頃から児童養護施設で育ったことが知れ渡った。家庭の事情で苦難の道を歩んだ、いわゆる"やんちゃ坊主"。一時はグレかけたが、施設や学校で熱意ある指導者、友人に出会い、千葉国際高校時代に頭角を現す。"房総のダルビッシュ"と名を轟(とどろ)かせ、高評価で悲願のプロ入りを果たした。

 だが、仮契約を結んだ18日後の12月4日、高速道路を無免許及びスピード違反で運転し、道路交通法違反で摘発。入団手続きが凍結され、シーズン開幕が目前に迫った3月10日、ようやく正式契約に至った。

「こうしてみると僕は、ドラフト指名されたことで、満足してしまったのだと思います。指名されるかどうかわからず、おびえていた気持ちが、指名されたことによって、ホッとして気持ちがゆるんでしまいました。だんだんと野球が大好きな本来の自分を見失っていき、このような問題を起こしてしまいました。僕は、野球をとったら何も残らない人間です」(原文ママ)

 反省文でこう綴った相内だが、摘発の代償は小さくなかった。社会的制裁や背番号の変更(41→71)だけでなく、1月の新人合同自主トレと2月の春季キャンプに参加できなかったのである。

 新人選手、特に高卒選手にとって、1、2月の意味は大きい。長丁場のペナントレースを戦い抜くためには、この時期に体作りを徹底的に行なうことが不可欠だ。土台がしっかりしていなければ、スタミナ切れやケガにつながってしまう。一般的な高卒選手の場合、プロ仕様の体力と筋力をつけるまでに1年を擁することも珍しくない。

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