保留者ゼロ。なぜ中日の選手たちは「大幅減俸」を受け入れたのか

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 以下の金額は、すべて推定である。

 それが、総額で8億円超なのだとか――。

中日のGMに就任した落合博満氏は8億円を超すコストカットを実現させた中日のGMに就任した落合博満氏は8億円を超すコストカットを実現させた

 日本プロ野球選手会が公にしている年俸調査に基づくと、外国人選手を除いたドラゴンズの2012年度、61選手の年俸総額は31億7080万円。この額には出来高契約等の金額は反映されていないので正確な数字とは言えないかもしれないが、つまり、8億円といえばドラゴンズの年俸総額の約4分の1ということになる。このオフ、ドラゴンズは前年比で約8億円、およそ4分の1のコストカットを実現させたのだ。

 そんなに減らせるものなのか。

 いや、この人が本気になれば、そのくらいは減らせるということか。

 これが、ゼネラルマネージャーとして2年ぶりにドラゴンズに戻ってきた落合博満前監督の辣腕による賜(たまもの)であることは容易に想像できる。11月20日、谷繁元信監督兼捕手が選手としての契約を交わしたことで、ドラゴンズは育成契約の2人を含む56選手全員との2013年度の契約更改を終了した。12シーズンぶりにBクラスに沈んだドラゴンズに突如として吹き荒れた冬の嵐は、選手たちを体の芯から震え上がらせた。

 確かに、ドラゴンズの台所事情は厳しい。

 落合前監督のもと、リーグ優勝を果たした2010年でさえ、経常利益は前年比で3億を超えるマイナス。いくら勝っても赤字では球団経営は成り立たないという一部球団内からの批判もあって、ドラゴンズは2011年のオフ、落合前監督を退任に追い込んだ。チームを球団初のリーグ連覇に導きながら、ファンサービスに熱心ではない、マスコミに協力的でないことが観客動員の不振につながっていると理由づけたのである。しかし、『ファンとともに』というスローガンのもと、積極的にサインに応じ、メディアに協力するなど、チーム方針を180度転換させて戦った高木守道監督でも、入場者数の減少を食い止めることはできなかった。今シーズンの観客動員数は1997年のナゴヤドーム開場以来、初めて200万人を割る199万8188人。5年連続の減少だった。

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