元巨人ドラフト1位・辻内崇伸「8年間の悔恨」を語る (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

―― その一方で、大阪桐蔭のチームメイトだった平田良介(中日)選手は、一軍の試合に出て活躍しています。彼の活躍をどんな思いで見ていましたか。

「悔しさとかは一切なく、素直に嬉しいですね。今、(大阪桐蔭の)僕らの代で野球を続けているのは、平田とあとひとりクラブチームでやっているだけので、誇りじゃないですけど、ふたりには本当に頑張ってほしいですね」

―― そして今年が最後のシーズンになってしまいました。

「まさかの一軍キャンプスタートだったんですけど、ブルペンに入ったらすぐにヒジを痛めてしまって……。それで3月にネズミ(遊離軟骨)を取るための手術をしたのですが、僕はカルシウムが人の倍ぐらいあるらしく、骨ができやすい体質みたいで、取った骨もすごく大きかった。それに、以前、左ヒジ靭帯の再建手術をしたことがあったのですが、その箇所に大きな骨ができていることがわかって、それが痛みの原因になっていると。その骨を取る手術も検討したんですけど、リハビリに時間がかかるということで、結局、ネズミだけを取ることにしたんです」

―― 今季は公式戦の登板はなく、8月31日のプロ・アマ交流戦(帝京大)で1イニングを投げたのが、唯一の実戦登板でした。

「あの試合に投げるというのは、1カ月前からわかっていて、そこに向けて調整していたんです。でも、1週間ほど前にヒジが痛くなってしまって。それでもコーチの方は『頑張って投げてみろ』と言ってくれて、それで投げたんです。正直、ヒジを痛めた時点で『ここまでかな』という気持ちはありました。実際に球速もMAXが131キロで、ボールのキレもない。これはプロのピッチャーのボールじゃないなと思いましたし、どこか諦めの気持ちもありました」

―― その時に引退を覚悟したと。最初にその気持ちを伝えたのは。

「嫁に言ったのですが、本当はもっと続けてほしかったみたいですね。球団から戦力外を受けた時も、『トライアウトは受けるの?』って聞いてきましたから。でも、僕が『もう痛いのは嫌や』と言ったら、納得してくれました」

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