嗚呼、ベイスターズを出て幸せになった男たちがいっぱい

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 熱戦が続き、大きな盛り上がりを見せる2013年日本シリーズ。なかでも10月31日に行なわれた試合は、このシリーズ初の延長戦となる大激戦となった。この試合の主役は、6回からマウンドに上がり5イニングを投げ抜いた則本昂大(楽天)であることに異論はない。だが、その則本から本塁打とタイムリーで執念の同点劇を演出した村田修一(巨人)や、再三の好守でチームのピンチを救った藤田一也(楽天)の活躍も光った。そして彼らの活躍を見るたび、ベイスターズファンは何とも複雑な心境になるのだった。

攻守にわたり楽天の中心選手となった藤田一也攻守にわたり楽天の中心選手となった藤田一也

 村田も藤田もかつてはベイスターズの選手だった。本塁打王を2度獲得するなどチームの顔だった村田は、2012年オフに「強いチームはいいなと思った。このままズルズルと野球人生を終わらせたくない」とFA宣言し巨人に入団。その言葉通り、巨人移籍1年目の昨年、自身初のリーグ優勝、日本一を味わった。

 一方の藤田は2012年シーズン途中に内村賢介とのトレードで楽天に移籍。ベイスターズ時代の藤田は、かつての同僚である仁志敏久に「今、プロ野球でいちばん守備がうまいのは藤田」と言われるほど守備で高い評価を受けていたが、打撃面での非力さが首脳陣の信頼を得られず、一軍と二軍を行き来していた。

 その藤田の守備力に目をつけたのが、投手を中心とした守りの野球を標榜する楽天・星野仙一監督だった。「アイツ(藤田)がチーム入り、オレの理想とする野球ができるようになった」と語るように、星野監督は藤田を積極的に起用し、藤田もまたその期待に応えた。プロ9年目の今季、主に「2番・セカンド」として自己最多の128試合に出場し攻守で活躍。楽天のチーム創設初のリーグ優勝に大きく貢献した。藤田は言う。

「まさか優勝を味わえるなんて思っていなかった。本当に楽天に来てよかった」

 実は、村田や藤田だけでなく、ベイスターズを出た選手が移籍先でチームに貢献し日本一やリーグ優勝を経験するというケースは多い。

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