楽天初優勝。チームをひとつにした「8月のある出来事」

  • 山村宏樹●文 text by Yamamura Hiroki
  • photo by Nikkan sports

 球団創設9年目にして、ついに楽天が初優勝を果たしました。楽天の初年度から昨年までプレイしていたOBとしてこれほど嬉しいことはないですし、首脳陣、選手をはじめ、スタッフの方々には心から「おめでとう」、そして「ありがとう」と言いたいです。

球団創設9年目で、初のリーグ優勝を達成した楽天球団創設9年目で、初のリーグ優勝を達成した楽天 今シーズンの楽天を振り返ると、ポイントになる試合は数多くあったと思いますが、なかでも8月23日からKスタ宮城で行なわれたロッテとの首位攻防3連戦がターニングポイントだったと思います。

 この試合を迎えるまで楽天は5連敗を喫しており、ロッテとのゲーム差は2.5。3連敗すれば首位を明け渡すどころか、一気に失速する可能性もあったと思います。この大事なロッテとの初戦、楽天のマウンドを任されたのは開幕から連勝記録を続けている田中将大でした。

 さすがの田中もプレッシャーがかかったのか、先頭の岡田幸文にいきなり二塁打を打たれ、その後、四死球もあって二死満塁のピンチを作ってしまいました。ここでバッターはベテランのサブロー。ここでも制球が定まらず、フルカウントにしてしまいます。そこで田中-嶋(基宏)バッテリーが選択したのは「スプリット」。やや高めに抜けましたが、意表を突かれたサブローは手が出ず、見逃し三振。大ピンチを切り抜けました。もしこの一球が違う結果になっていたら、この日の田中はわかりませんでした。

 のちに、嶋は次のように語ってくれました。

「あの一球がすべてでした。田中もこういう時があるんだなぁ、と。正直、指から離れた瞬間、『あっ!』と思いました。ただ、その次の回からは本来の田中に戻っていました」

 1回のピンチを切り抜けたことで田中も立ち直り、7回を投げ無失点。打線もロッテ先発の西野勇士に4回までパーフェクトに抑えられていましたが、5回に枡田慎太郎がチーム初安打を放つと、嶋の安打と島内宏明の犠飛で1点。6回にも4連打などで3点を挙げて、試合を決めました。

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