「9月の悪夢」は繰り返さない。CS初進出へ、広島ナインの思い

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro 大久保泰伸●協力 cooperation by Ohkubo Yasunobu

 混戦を極める3位争いから、広島カープがじわり抜け出しつつある。
 
 8月24日のヤクルト戦で今季5敗を喫していた天敵・小川泰弘を打ち崩し6度目の対戦で初めて土をつけ、4位・中日とのゲーム差を3.5に広げた。2連勝で迎えた翌25日は、宮本慎也の今季限りでの引退報道が特効薬となったヤクルトに逆転負けして同一カード3連勝は逃したものの、4カード連続の勝ち越しを決めて、クライマックスシリーズ出場権をかけた争いから頭ひとつリードしている。だが、広島にとって本当の戦いは、ここから始まる――。

ここまで11勝を挙げ、広島投手陣を牽引する前田健太。photo by Nikkan sportsここまで11勝を挙げ、広島投手陣を牽引する前田健太。photo by Nikkan sports

 エースの前田健太は言う。

「ここ何年の経験からも、夏場以降がチームにとって大事な時期になる。毎年続くBクラスを変えたい。後半戦に弱いということも、みんなが自覚すれば変わってくると思います」

 長く続く負の遺産との決別。過去に何度かあったチャンスを逃し続けてきた広島にとって、これは一筋縄でいくものではない。

 広島が最後にAクラス入りしたのは、三村敏之監督のもとで3位になった1997年。以降、監督は三村敏之、達川光男、山本浩二、M・ブラウン、そして2010年からは野村謙二郎へと代わったものの、15年続けてBクラス。ただ、この間もAクラス入りのチャンスは何度かあった。

 最大の好機が訪れたのは、セ・リーグにクライマックス・シリーズ(CS)が導入されて2年目の2008年。3位の座を前年日本一の中日とシーズン最終盤まで争った。9月19日からの直接対決3連戦では2勝1敗と勝ち越し、残り15試合を切った時点で3位につけたが、中日が残り試合を8勝4敗とした一方、広島は5勝7敗1分と負け越し。ゴール前での叩き合いの末、わずか2ゲームの差で逃すことになった。

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