この夏の甲子園で噴出した「高校野球の問題」 (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

 そして今大会、最も注目を集めたのが、花巻東の身長156センチの外野手・千葉翔太だ。準々決勝の鳴門(徳島)戦では5打席で計41球を相手投手に投げさせるなど、「カット打法」で観客の心を掴んだ。しかしその試合後、審判部から「高校野球特別規則がある。あの打ち方はスリーバント失敗と同じ扱い。次にやったらアウトにする」と異例の"禁止令"が出された。「カット打法」を封印させられた千葉は、準決勝でファウルを1本も打つことができず、4打数無安打。千葉が輝きを失った瞬間、花巻東の進撃も終わった。

 大会本部は「2回戦、3回戦は問題となる事例はなかった」と説明したが、初戦(2回戦)となった彦根東(滋賀)との試合で千葉は7球ファウルで粘るなど13球を投げさせており、少なくとも準々決勝だけバッティングを変えた印象はない。なぜあのタイミングで指摘したのか疑問が残る。

 今夏の新潟大会では、あるチームの選手が千葉と同じような打法で9球連続ファウルを打ち、17球投げさせて話題になった。高校野球の特別規則には『カット打法は、そのときの打者の動作(バットをスイングしたか否か)により、審判員がバントと判断する場合もある』と書かれているが、明確な基準はなく、審判によって判断が分かれるのは否めない。禁止なら禁止で、大会前からきちっとした基準を示し、全出場校に通達する義務があったのではないか。

 また、花巻東と鳴門の試合では、花巻東にサイン盗みの疑惑が浮上した。「二塁走者が打者にサインを送っている」という鳴門側からの指摘により、球審が二塁走者に注意。試合後の取材でもこれに関する質問が飛び交い、翌日の新聞でも大きく取り上げられた。だが、これは氷山の一角に過ぎない。二塁走者からだけではなく、一塁、三塁コーチャーからサインの伝達を行なっているチームも多いと聞く。

 実際、強豪校を破ったあるチームの一塁コーチャーは、こう語っていた。

「キャッチャーのサインが全部見えてわかったので、ストレートの時は『狙え!』と言って(打者に)教えていました」

 もちろん、どのチームがサイン伝達をしているかという情報を把握している場合もある。前橋育英のショート・土谷恵介はある試合で捕手がサインを出す際、二塁走者の前に立って隠していた。

「監督からそうやるように言われました。『(守備位置に戻るのが)遅れてもいいから』と。ぎりぎりまで隠すようにしました。サインもいつもとはちょっと変えました」(土谷)

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