松井裕樹なき甲子園。この夏、スカウトたちが見た5人の逸材 (3ページ目)
そしてこの夏、スカウトの評価を一気に上げたのが、開幕試合で148キロをマークした古川侑利(有田工/投手)だ。
「まだフォームは雑だし、完成度も高くないけど、力強さを感じる。バッティングもパワフルだし、野手としても可能性を感じる。面白い存在だね」(パ・リーグスカウト)
「この夏までは無名だったのに、ひとりでチームを引っ張り、甲子園まで連れてきた。高校生は日々成長するということを見せつけたひとり。無名校でも頑張ればできるという意味で、手本になる選手」(セ・リーグスカウト)
ここまで挙げた5選手はドラフトでの指名が濃厚だという。そして彼らに続く逸材として挙がったのが、以下の選手たちだ。
広島大会決勝で、引き分け再試合を含む24イニング無失点の好投を見せた山岡泰輔(瀬戸内/投手)は、身長172センチと小柄なところ以外は評価が高かった。
「球のキレ、コントロールとも素晴らしい。ピッチングに関してはすでに完成されているから、早い段階で活躍できるかもしれない。不安があるとすれば、体のサイズと伸びしろの問題だけかな」(パ・リーグスカウト)
また、木更津総合打線を4回まで無安打に抑えた浦野峻汰(上田西/投手)も171センチと小柄だが、左投手だけにそれほどサイズの問題はないという。
「スライダー、低めの制球、そして何より投げっぷりがいい。即プロというより、大学に行って4年間鍛えれば面白い存在になると思う」(パ・リーグスカウト)
野手では岩重章仁(延岡学園/外野手)が指名されてもおかしくないベレルだという。
「今はヘッドが出てこないけど、それは直せる。右の大砲として小久保裕紀(元ソフトバンク)をイメージさせる」(パ・リーグスカウト)
この他にも、走攻守とも安定している吉田雄人(北照/外野手)、俊足強肩の岸里亮佑(花巻東/外野手)、玉野光南との試合でバックスクリーン横へ特大の一発を放った一戸将(聖愛/内野手)の名前が挙がった。
そして多くのスカウトたちが声を揃えたのが、「2年生に好素材が多いことが確認できた」ということ。愛媛大会で157キロを記録した安樂智大(済美/投手)と岩国商との試合で9連続三振をマークした高橋光成(前橋育英/投手)は、来年の目玉候補。この他にも岩下大輝(星稜/投手)、飯塚悟史(日本文理/投手)の成長に期待したいという声が多かった。
野手では、神奈川大会で桐光学園の松井から本塁打を打ち、甲子園でも特大の一発を放った高濱祐仁(横浜/内野手)、春夏連続して甲子園で本塁打の桒原樹(=くわはら・たつき/常葉菊川/内野手)、さらには浅間大基(横浜/外野手)、長野勇斗(三重/外野手)と好打者が多く、スカウトたちも「来年が楽しみ」と言って甲子園をあとにした。
例年に比べ、注目選手が少ないと言われた今大会。とはいえ、スカウトたちの評価はあくまで現時点のものに過ぎない。これらの評価を覆(くつがえ)し、将来の野球界を背負って立つような選手が生まれることを期待したい。
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