阪神の将来のエース。解説者7人の「藤浪晋太郎」論 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

◎山村宏樹(94年阪神ドラフト1位)

「藤浪にはプロ野球選手としての素晴らしいセンスがあります。高卒の新人は高校野球の延長のような感じで、プロ入りしてからも練習や試合などですべて全力でいってしまうんですが、彼はメリハリがつけられる。試合や遠征で疲労もたまっているだろうけど、練習も休息をいれながらやっている。それが今の成績につながっていると思います。そして、阪神のドラ1というプレッシャー。連日マスコミに囲まれ、熱烈なファンも多く、私は戸惑うことばかりでした。でも彼を見ていると、それも心配なさそうですね。それに球団も一生懸命、藤浪を守ろうとしている気がします。あと大きいのは西岡剛や岩田稔の存在。プロの世界では高校の先輩は頼りになる。ゲーム中に同じフィールドに(大阪桐蔭の"先輩がいる"というだけで精神的にかなり違ってくるんです」

◎遠山奨志 (元阪神二軍投手コーチ)

「藤浪については走者を出してからのピッチングを評価しています。ピンチの場面を迎えてから、もう一段階上のボールを投げることができる。これはダルビッシュ有(レンジャース)や田中将大(楽天)、松坂大輔(インディアンス3A)と似ています。いざという時に、厳しいところに投げ込める力強いボールと精神力がある。だからこそ、1年目から結果を出せているんです。それに、僕は高卒1年目で8勝を挙げましたが、2年目は故障に悩まされました。いま思えば、1年目は無我夢中でやっていたんでしょうね。すべてが未知の世界でしたし、だからこそ怖さも知らずに前だけを見ることができた。シーズンが終わっても疲れは感じませんでした。ところが翌年、アメリカの教育リーグに参加した時、ヒジに違和感が出たんです。疲れはないと思っていたんですけど、実は体が悲鳴を上げていたんです。当時はコンディショニングについての知識も浅かったですからね。その点、藤浪はチームのサポートもしっかりしているし、自分の体についてもよく知っている。僕のように故障する心配はないと思います」

◎与田剛(第2回、第3回WBC日本代表投手コーチ)

「ここ数年、高校生でも150キロのストレートを投げる投手が増えてきました。我々の時代では想像もできなかったことです。これはアマチュア球界の指導力が高くなったからだと考えられます。プロに入って活躍するための準備ができている。体力作りをはじめ、速いボールを投げるための練習など、我々がやっていた時代よりも相当進化しています。まして藤浪選手のように身長のある選手は体のバランスを整えるのが難しく、結果を出せずに終わってしまう投手を何人も見てきました。子どもたちの野球に対する意識の高さにも驚かされます。中学生くらいでも、我々がプロに入ってから考えたようなことを口にしている子がたくさんいます。一方で、プロ野球界もいろいろな分野のトレーナーの方たちが集まってきて、選手たちの練習やコンディショニングをケアするようになってきている。藤浪選手の活躍を大局的にみれば、プロアマのこういった長年の蓄積が要因にある気がします。若い子たちがいい形で成長しているのは間違いないですね」

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