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菊池雄星「ピッチングの『教科書』は捨てました」 (5ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

―― 「スリークオーターだと外旋が効く」と言っていましたが、パワーをためられるということ?

菊池 オーバースローだと外旋をできないので、ひねりとねじりができないんですよ。スリークオーターだと外旋が一番効くから、筋肉の反射を使っていけるという感じですね。筋肉が一番使われるポイントは人それぞれです。ゼロポジションって言われていますよね? 

―― ガッツポーズをしているときの肩の位置で、筋肉がリラックスして余計な力が入っていないから、最も肩を動かしやすいと言われる位置のことですね。

菊池 はい。自分はゼロポジションより少し下のほうだと、筋肉が全部はまって力が出やすいんです。去年はゼロポジションを意識しすぎて、理屈でやっちゃっていました。今年は「下がってもいい。人それぞれじゃん」っていう感じで、「ゼロポジションは関係ない。自分は下がっても投げられるよ」っていう意識でやっています。

―― そう思うようになった理由は?

菊池 やっぱり、人それぞれ違うのかなと思うんですよ。150キロを投げるのにも、いろんな投げ方がある。バッターもいろんな打ち方の人がいるのと一緒です。本を見て、「この投げ方をしたほうがいいよ」というのを実践した8、9割の人は良くなったとしても、残りの1割は合わない人がいると思います。自分はその1割なのかなと思って。だったら自分でフォームを探したほうがいいのかな、と今はやっています。教科書通りにやるのではなく、自分の感覚を大事にしたいと思っていますね。

―― 感覚の話で言うと、三振を取ったシーンの映像は見ないようにしているというのも興味深いです。

菊池 映像って頭に残りやすいので、それに追いつこうとして思考で判断しちゃうんですよ。だから見ないで、「あの時はどうだったかな」と体で覚えていたほうがいい。映像を見なくても、体は知っているのかなと。

―― 野球人生の究極の目標は?

菊池 ホント、目標とかないんですよ(苦笑)。

―― 現役を長く続けたいとか?

菊池 それも思わないですね。あまり長くはやりたくないので。やりたいことがたくさんあるんですよ。やりたいことがたくさんある分、いま活躍しないとできないと思うので。

―― やりたいことって?

菊池 あまり言いたくないんです(笑)。

―― 理想としているピッチャーは?

菊池 ランディ・ジョンソンですね。見入っちゃいますよね。あの人にしかできないような投げ方で。それこそ教科書通りではないですし。単純にカッコいいし、見とれちゃうし。そういう選手になれればいいなと思いますね。

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