「怒らせると怖いヤツ」。ロッテ・唐川侑己の殺気に満ちたピッチング

  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

2年ぶりの2ケタ勝利を狙う唐川侑己2年ぶりの2ケタ勝利を狙う唐川侑己安倍昌彦の投魂受けて~第32回 唐川侑己(ロッテ)

 唐川侑己のもとを訪れたのは、彼が千葉県・成田高校2年(2006年)の時の11月だった。その時、尾島治信監督の第一声を今でも覚えている。

「アイツ、ブルペンだとたいしたボール投げないですよ。マウンドに上がらないと本気にならないですから、唐川は」

 これより少し前に行なわれた明治神宮大会で初めて彼を見たが、スリムというよりひょろっとしたユニフォーム姿が印象的だった。首が長いから、余計にそう見えたのかもしれない。それでもピッチングは、ここ一番の場面になるとギアを上げて投げ込んでくる。「これは本物のピッチャーだわ」と思わず感心させられたものだ。

 とはいえ、ボールそのものはまだ幼さがあるように思えた。「今日は楽かな......」。そんな思いで成田高校のグラウンドに向かったのだったが......。

 にっこりすると、ほんとまだ「少年」のようなあどけなさがあった。きっと、両親をはじめ家族の愛情を一身に受けて育ったんだろう。だが、ブルペンで投げ始めると、その顔が一変。もう笑顔はなく、「戦う男」の顔になっていた。

 ぶれない腕の振り、一定のリリースポイント。きれいなスピンのかかったボールが同じリズムでミットに突き刺さる。投げ損じがない。高校生、それもまだ2年生の秋でこの完成度の高さ。受けていて、こんなに気分のいいボールもない。心地よい捕球音が、繰り返し、甲高くブルペンに響く。

 だけど、こんなもんじゃないはず。尾島監督が言っていた通りだ。ちょっと煽(あお)ってみた。

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