楽天・則本昂大を覚醒させたライバルの存在
5月25日の広島戦に勝利し、4勝目を挙げた楽天・則本昂大安倍昌彦の投魂受けて~第31回 則本昂大(楽天)
「あれっ! フォーム変わってるじゃない! 」
早朝7時半、三重中京大のブルペンで投げ始めた則本昂大(のりもと・たかひろ)を見て、「知っていた則本」と違っていたのに驚いた。テイクバックで右手が後方に伸びない。則本の右腕が、自然な「くの字」を保ったまま、右のわき腹に沿って、スルスルと巻き上がる。だから、右手が高く上がって、そこから自然にしなやかに腕が振り下ろされてくる。
前年までは反対だった。テイクバックで右手が思い切り後方に伸びて、そこから強引に振り回すように腕を投げ下ろしていた。よく言われる「アーム式」というやつだ。
体幹と地肩が抜群に強いから、スピードは出た。2年生の時の大学選手権で「140キロ後半」を立て続けに投げ込んでいるのを見た時、ヒジや肩にいつか大きな故障が来なければいいが......と心配したものだった。
「ここ(三重中京大)に来て、きちんとトレーニングをしたらすぐ140キロ後半が出て、それはそれでうれしかったんですけど、『全国』に行くと自分のストレートが通用しない。それで去年(2011年)の秋から、速いストレートより『打たれないストレート』を求めて練習してきたんです」
見るからに鼻っ柱の強そうな則本だが、笑うとなんとも味のある表情になった。
「150キロ出ても、打たれたらつまらんし」
それが合理的な投球フォームにつながった。速球のスピンがすごかった。ピンポン球みたいにホップしながら、こっちのミットに突き刺さった。
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