名球会ブームも、もう200勝投手は現れない? (3ページ目)

  • 阿部珠樹●文 photo by Abe Tamaki
  • 荒川祐史●写真 photo by Yuji Arakawa

 ひと昔前は、2ケタ勝利、20勝を目標に掲げる投手が多かったが、最近は「何勝したい」というコメントを聞くことがほとんどなくなった。ダルビッシュにしても、これまで勝ち星に関する目標を本人の口から聞いたことは一度もない。

 それよりも投球回数とか、クオリティスタート(先発して6回を3失点以内に抑えること)といった目標を口にする選手が増えているように思える。メジャーに行った当初の野茂英雄が口癖のように、「数字よりもローテーションを守りたい」と言っていたことを思い出すが、そうした考え方が日本の若い投手にもいつの間にか定着してきたのではないか。

 吉井氏もその傾向を認める。

「僕もわりと早い段階からそういう考えでしたね。まず、200勝という数字がどこから出てきたのかがわからない(笑)。勝ち星なんて運に左右されますし、自分の力だけではどうにもならない部分があります。もちろん、自分が投げる試合は勝ちたかったけど、絶対に白星がほしいという考えはなかったですね。今、メジャーに行っている選手、例えばダルビッシュなんかも、同じ考え方かもしれないですね」

 要は、チームの勝利にどれだけ貢献できるかが問題で、自分に勝ちがつくかどうかは問題ではない。そう考える投手が増えてきたとすれば、200勝は大きな目標ではなくなる。そもそも200勝というのは、名球会の入会資格ということで特別視されてきただけで、199勝ならダメで200勝なら見事というものでもないだろう。時代と野球の変化に合わせた、新しい指標が求められているのかもしれない。

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