強烈な負けじ魂が生んだ、ヤクルト・小川泰弘の投球スタイル

左足を胸の高さまで上げるフォームから「和製ノーラン・ライアン」の異名をとる小川泰弘左足を胸の高さまで上げるフォームから「和製ノーラン・ライアン」の異名をとる小川泰弘安倍昌彦の投魂受けて~第30回 小川泰弘(ヤクルト)

 昨年の秋、ドラフトから1週間が経っていた。11月だというのに、横浜スタジアムには春の盛りのような陽が降り注いでいた。

 関東地区大学野球選手権大会。つまりは、学生野球の秋の全国大会である「明治神宮野球大会」の関東地区予選である。単独で代表権を持つ東京六大学連盟、東都大学連盟以外の5つのリーグ戦(関甲新学生野球連盟、千葉県大学野球連盟、東京新大学野球連盟、首都大学野球連盟、神奈川大学野球連盟)のそれぞれ上位2校が出場し、トーナメントを戦う。そこで決勝に進んだ2校が「神宮」の切符を手にすることができるわけだ。

 その日、創価大学は首都大学リーグの強豪・東海大学との一戦を控えていた。試合開始1時間前。スタジアムの周りでは選手たちのアップが始まっていた。どこにいるかな......。創価大の絶対的エース・小川泰弘にひと言だけ声をかけたかった。20人ほどの選手たちがダッシュを繰り返し、入念なストレッチを続けているその集団の中に、彼はいなかった。あっちだな、きっと......。外野スタンドの方にまわってみた。

 いたいた。小柄なユニフォーム姿。それでも、圧倒的な肉付きの下半身が「ボクはここです」と教えてくれた。こちらに背中を向けて、腰に手をあて、下を向いて何かを念じているように見えた。

「小川が投げている時、結構、気を使うんですよ。今、マウンドに行ったら迷惑かな......とかね」

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