脅威の奪三振率。ソフトバンク・千賀滉大こそ和製ライアンだ!

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

高校時代は無名だったが、プロに入り才能を開花させた千賀高校時代は無名だったが、プロに入り才能を開花させた千賀「アレは『年俸3億円のピッチャー』が投げるボールですよ」

 あるベテラン投手が思わず唸(うな)るほど、とてつもない投手がソフトバンクに現れた。ストレートは最速155キロ。フォークはテレビ画面でも分かるほど大きな落差。そしてカーブを投げれば右バッターはのけ反ってしまうのだ。真っ直ぐも変化球も「超」がつくほど一級品。まるで藤川球児(カブス)の絶頂期を見ているようだ。

 しかし、実年俸はまだ650万円(推定)。プロ3年目の千賀滉大がその人である。

 ちなみに藤川の阪神時代の最高年俸は4億円+出来高と言われている。千賀はその60分の1以下。しかし、今やパ・リーグ屈指の奪三振マシンなのだ。今季ここまで(4月23日現在)9試合に登板し、投球回数13回3分の2に対して25奪三振。これは中継ぎ投手でありながらパ・リーグ3位の奪三振数。そして奪三振率「16.46」は、断トツの1位だ。珍記録も作った。4月17日の楽天戦(Kスタ宮城)でプロ野球史上15人目の1イニング4奪三振をマークしたのだ。ホークスの歴史の中では、工藤公康、斉藤和巳、杉内俊哉に次いで4人目。あまりの豪華な顔ぶれに、本人は「すごい!」と照れ笑いを浮かべるのだった。

 この右腕、一体何者なのか。

 2010年"育成"ドラフト4位――正直、入団発表の頃の印象は記憶にない。愛知県の蒲郡(がまごおり)高校出身。甲子園出場はなく、最後の夏は県大会3回戦で敗退。ドラフト特集本などでもその名前を見つけることはできず、苦労した覚えがある。しかも、夏の思い出を尋ねてみたところ、「僕は投手じゃありませんでしたから」と衝撃的な言葉を口にするのだ。

「1年生の時から投げていて、3年生の時は背番号1でした。でも、初戦の内容が悪くて(完投するも8四死球で5失点)、負けた試合はレフトで出場。気づいたら7点差をつけられていて、マウンドに上がった頃にはどうにもならない展開でした」

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