本塁打激増の謎に迫る。「統一球」はどこに消えたのか? (3ページ目)
統一球導入により本塁打の減少が囁かれた時、使用球とともに指摘されたのがストライクゾーンの問題だった。統一球導入に歩調を合わせるようにストライクゾーンが広めに設定されるようになったという声を、複数の選手やコーチから聞いた。
2011年3月に起きた東日本大震災の節電対策として、この年のシーズンから3時間半を超えて延長戦の新しいイニングに入らない「3時間半ルール」が導入された。これにより少しでも試合進行を早めようと、ストライクゾーンが広くなったという。だが今年はその「3時間半ルール」が撤廃され、ストライクゾーンもやや打者よりに触れて、それが本塁打増加につながっているのではないかという意見もある。ある球団のスコアラーは次のように言う。
「昨年よりボール半個から1個分ぐらい狭くなった気がします。実際に映像で見ても、『そこがボール?』ということはあります。戸惑っている投手は多いと思いますよ」
もちろん、ストライクゾーンの変更が表明されたわけではなく、あくまでも憶測の域を出ないが、現場の人間が何かを感じているのは事実だ。
最後に興味深いデータを紹介したい。1試合平均の観客動員数だ。統一球導入以前の2010年は25626人。それが導入初年度の2011年は24965人になり、2年目の2012年は24734人とわずかずつだが減少傾向にある。特に、東日本大震災があった2011年より昨年の方が減っているのは、本塁打数の減少とまったく無関係ではないだろう。ある球団幹部が「あくまでも噂ですけど……」と前置きした上で、こんな話を聞かせてくれた。
「選手会からも統一球に対して見直し要求の声が上がっていましたが、コミッショナーとしては一度決めたものをすぐに変えるわけにはいかない。でも、WBCに敗れたことで、統一球を使うことに意味があるのかという意見が噴出し、同時に野球離れも懸念された。それで検討されることになり、以前よりも反発係数が高いボールを使うようになったというのです。これまでのボールは在庫処分を兼ねて二軍の試合で使われているとか(笑)」
二軍の今シーズンここまで(4月20日現在)の1試合平均本塁打数は0.79本。これは2010年の0.95本、2011年の0.92本よりも大きく下回っている。ちなみに、統一球導入の前年は1.55本だったことからもわかるように、数に違いこそあるが一軍と同じ傾向にあった。それが今年は一軍が増加傾向にあるのに、二軍は減少している。これを見る限り、ただの噂話ではなさそうだ。野球の華である本塁打が(一軍の)試合で増えるように微調整が施(ほどこ)されたと考えてみても不自然ではない。
実際、4月19日の試合で阪神の福留孝介がサヨナラ満塁弾を放つなど、スリリングな展開が増えている。まだまだ統一球に関して謎は多いが、様々な憶測を交えながらプロ野球を楽しむのも決して悪くない。
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