【高校野球】センバツ総括――6校出場もわずか1勝。関西勢の凋落はなぜ起きた? (2ページ目)
近年、宝塚ボーイズは聖光学院(福島)や立正大淞南(島根)らに多くの選手が進み、今年は久しぶりに駒大苫小牧にもひとり行ったという。つまり、いい野球を求めた結果、地方へ進む率が高くなったというのだ。ダルビッシュが育ったボーイズリーグの強豪・オール羽曳野(はびきの)の山田朝生監督からも似たような話を聞いたことがある。山田監督が声を大にして語っていたのが、指導者の「熱」の部分だった。
「ある関東圏の高校の監督さんでしたけど、『どうしても大阪の子の気質をチームに入れたい』と、練習が終わってから車を飛ばして、ウチのグラウンドまで何度も来られました。それでこちらも練習を見に行かせてもらったのですが、すごくいい練習をやっていて、何より選手の表情が素晴らしかった。これだけ熱のある人なら、子どもたちの面倒もしっかり見てくれると思って、何人かの選手を預けました。それからすぐに甲子園にも出たので、『やっぱりな』と思ったことを覚えています。じゃあ、それくらいのエネルギーや愛情を持っている人が近く(関西)にどれだけいるかとなると、ちょっと考えてしまいますね」
平成20年以降、関西勢の甲子園での成績(春夏通算)は83勝68敗で、一見、十分な成績にも見える。だが、ここから昨年の甲子園で春夏連覇を達成するなど、近年、圧倒的な強さを見せる大阪桐蔭の勝敗を除くと、64勝64敗となる。
「確かに、関西勢で結果を出しているのは大阪桐蔭だけと言ってもいいぐらいですね」
こう切り出したのは、かつて報徳学園で監督を務め、その後も甲子園の解説やスポーツ紙で観戦記を執筆するなど、高校野球に造詣が深い福島敦彦氏だ。福島氏の見方はこうだ。
「様々な情報網が発達し、交流も盛んな今の時代、学校の名前やユニフォームの力は通じなくなっています。今回も母校の報徳や古豪の平安が初戦で負けましたが、試合ぶりを見てそんなことを感じました。地方の力が上がっているのはもちろんですが、関西のレベルが下がっているのも事実。報徳や平安をはじめ、今回は出場していませんが智弁和歌山といったところも甲子園には出るけど、勝ち上がれなくなってきている。かといって、そこに代わる学校の台頭もない。選手の流出ということも少しはあるかもしれませんが、指導者にはそこを逃げ道とせず、知恵を絞ってもう一度、強い関西勢の復活を期待したいですね」
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