【プロ野球】藤浪晋太郎の開幕ローテーション入りは正解なのか?

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Koike Yoshihiro

「開幕一軍にはこだわりません。結果的にそうなればいいですけど、1年だけじゃなく10年、20年と活躍できる投手になりたいので......」

 昨年のドラフト直前、藤浪晋太郎にプロ1年目について尋ねると、このような答えが返ってきた。もちろん、弱い気持ちやプロへの不安から発した言葉ではない。常に先を見据え、決して現状に満足することなくここまで来た男の「控えめな発言」だった。

 だが、キャンプ、オープン戦を経て、藤浪は開幕一軍どころか、開幕ローテーション入りを確実なものとした。注目の初登板は開幕3戦目、3月31日のヤクルト戦(神宮)が有力視されている。実現すれば、高卒ルーキーとして開幕4戦目で登板した1999年の松坂大輔(当時・西武)、2005年の涌井秀章(西武)を抜いて史上最速となる。

 そもそも高卒ルーキーが開幕からローテーションに入り、シーズンを通して活躍した投手といえば、最近では2007年の田中将大(楽天)と1999年の松坂ぐらい。さらに......となると1966年の堀内恒夫(巨人)あたりまで遡(さかのぼ)らなくてはならない。この系譜を見ただけでも藤浪に対する期待の大きさがわかるが、一方で高卒ルーキーがプロの主戦としてマウンドに立つ難しさも感じる。

 先述した投手以外にも、高校球界を沸かせた剛腕や怪物が何人もプロの世界に進んでいる。しかし、1年目に先発ローテーションに入った投手はほんの一握り。力の差を痛感する投手がほとんどだが、なかにはチームの育成方針によるところもある。「高卒投手は2、3年ファームで鍛えてから」という定説を支持する声は、今も球界に残っている。ここまでキャンプ、オープン戦と順調にステップを踏んできた藤浪に対して、開幕ローテーション入りに異議を唱える人もいる。この春、29年に及んだスカウト人生に幕を閉じた元広島の宮本洋二郎氏はこう語る。

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