【プロ野球】高卒ルーキー投手が1年目から活躍する条件は? (3ページ目)
そして次に挙げたのが体力だ。永山部長は昨年の武田を振り返り、こんな話を聞かせてくれた。
「武田の変化球を含めたハイレベルな投球センス。そして高い意識。私たちの中では、杉内(俊哉)、和田(毅)、ホールトンの3本柱が抜け、武田が開幕からローテーションに入る可能性もあるかも……と思っていました。だから、いつも高卒の新人選手は三軍からキャンプをスタートさせるのですが、武田は二軍からスタートさせました。ただ、少しやらせてみると、体力が足りないとわかった。そこで三軍に落として、体力強化に努めさせたんです」
三軍で体力を鍛え直した武田は、ファームで登板を重ね、夏場から一軍の戦力になった。あらためて、開幕から1年を通して働いた松坂や田中のすごさを感じる一方で、釜田や武田のようにしっかりと段階を踏み、シーズン途中から一軍の戦力に加わる姿こそ、高卒1年目の投手の理想的な成長とも言えるのではないだろうか。
そして最後に挙げたのが、球団の育成に対する考えや体制だった。
「球団によっては、使えるとなれば早く使いたい、使わざるを得ないチーム事情のところもあります。逆にウチや巨人あたりは、戦力的に急ぐ必要はない。まずそこが大きな違いです。加えて、育成する体制がしっかり整っているかどうか。ソフトバンクの場合は、三軍制を敷いていますので、ルーキーに無理をさせないシステムができ上がっています。それに現二軍監督の小川(一夫)さんは、2011年までスカウト部長をやっていたこともあって、現場とフロントの意見交換も積極的に行なっています。当たり前のことですけど、選手が順調に伸びる環境がどこまで整っているか。これも大きな差になると思います」
育成選手を除くと、今年、高卒で入団した投手は10名。先述した藤浪、大谷、濱田の他にも、若松駿太(中日)、田川賢吾(ヤクルト)、相内誠、佐藤勇(ともに西武)、笠原大芽(ソフトバンク)、森雄大、大塚尚仁(ともに楽天)ら、素質豊かな選手が並ぶ。この中から果たして、第二の武田や釜田のような存在になりうる投手は現れるのだろうか。藤浪や大谷の動向も気になるが、他の高卒ルーキーの成長からも目を離すことができない。
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