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【プロ野球】問題だらけの「侍ジャパンvsキューバ」。
これでWBCをまともに戦えるのか? (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 にもかかわらず、福岡の試合の有料入場者数は1万7468人、札幌の試合は2万1236人。そもそもチケットの価格設定が高額で、福岡はもっとも高いネット裏が1万2000円、最安値の外野指定席が3500円。札幌ドームはフィールドシートが1万円、ネット裏は8000円、外野指定席が3300円。いずれの試合も内野のポール寄り、あるいは上段の方がガラガラで、このあたりはとくに割高感があったのだろう。福岡の場合はホークス戦なら2800円で見られる席が 7000円、札幌の場合は2000円の席が5500円で売られていた。

 この価格に見合うだけの選手がいれば、それもアリかもしれない。

 しかしながら、今回のチームはじつに中途半端で、シーズン中のホークスやファイターズを上回る魅力を観客に提供できていたかと言われれば、答えはノーだったと思う。いったいなぜ今回のメンバーに、田中将大や前田健太、内海哲也、牧田和久、攝津正、吉見一起、吉川光夫といった日本代表の投手陣の柱となるべき ピッチャーが一人として選ばれていないのか。WBCには欠かせないはずの稲葉篤紀はスーツ姿でテレビのゲスト解説として球場に現れ、相川亮二や谷繁元信ら、WBC出場の経験があり、メンバーに入ってもおかしくないキャッチャーも来ていない。オフに入って手術を受け、来春のWBC出場が絶望視されている中村剛也はやむを得ないにしても、中田翔をチームに加える可能性が高いなら、今回、呼ぶべきではなかったか。

 つまりは、"サバイバル"っていったい何だ、という話である。

 今回のキューバ戦は、WBCの代表入りを争う若手選手による"サバイバル"だと位置づけられていたそうだ。興行としてのキャッチコピーが欲しいだけで、とってつけたような理由にしか聞こえない。そもそも、シーズンを追え、それなりの実績を残したプロ野球の選手の中から代表メンバーを選考するのに、今さら、キューバとの2試合に出さなければわからないようなことがあるのだろうか。

 限られた試合数、短い練習期間。そもそも監督だって大騒動の末、シーズンが終わってようやく決まったくらいなのだから、準備期間も当然短い。では、NPB の裏方にWBCに向けて秘策を練るプロジェクトチームがあって、じつは水面下で暗躍していたのかと言えば、もちろんそんなシャレたことができるはずもない。

 だからこそ、一刻も早く代表メンバーを選び、2試合のキューバ戦は、この選手たちでWBCを戦います、という決意表明の場にして欲しかったのだ。先発させるピッチャーは、試したい若手でも構わない。投げなくてもいいからマー君やマエケンを招集し、因縁のライバルにして、第3回WBCでは、第1ラウンドから 日本と同じプールAに属するという、現時点でもっとも知るべき敵、キューバ代表というチームを、ダグアウトからでも肌で感じさせるべきだろう。主将を阿部慎之助に託し、来たるWBCに向けてメンバーをすべて集め、決起する場にすべきだったのではないだろうか。

 それがどうだ。

 福岡で先発した大隣憲司は2イニングス、22球。札幌で先発した澤村拓一も2ニングス、わずか16球で交代だ。中には10球にも満たない球数で降板したピッチャーもいる。正直、顔見せするほどのスターでもなければ、本戦に向けた経験値を高めることにもならない。そもそも、サバイバルと銘打って、選考する材料になるのだろうか。

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