【プロ野球】「もう一度、野球がしたい」――男たちのトライアウト2012

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

   今回が2度目のトライアウトとなったのが、ロッテの山田秋親(2000年/ダイエー2位・逆指名)だ。立命館大時代から150キロを軽く超える豪腕に注目が集まり、各球団で激しい争奪戦が繰り広げられた。ダイエー(現・ソフトバンク)入団後は先発の柱として期待されたが、思うような結果を残せず、2008年オフに戦力外となった。翌2009年は四国・九州アイランドリーグの福岡レッドワーブラーズに所属。その年のトライアウトを受け、ロッテと契約して2年ぶりにNPBに復帰を果たした。2010年には2073日ぶり勝利を挙げるなど28試合に登板したが、その後2年間はケガなどもあって一軍登板はなく、今シーズン終了とともに戦力外を言い渡された。自身2度目となるトライアウトでは、往年の150キロを超えるボールこそなかったが、胸元を鋭くついて、打者4人を無安打に抑えた。

「体が元気なうちは野球を辞めるわけにはいかない。もちろん日本のプロ野球がいいですけど、それがダメなら独立リーグでも海外でも、野球ができるのであればどこへでも行きます。大学時代、一緒にシドニー五輪に出場した(阿部)慎之助が頑張っている。自分も負けられません」

 また、トライアウトとはいえ"地の利"は生じる。Kスタを本拠地にする楽天を戦力外になった有銘兼久(2001年/近鉄ドラフト3位)や中村真人(2006年/楽天育成ドラフト2位)らにはひと際大きな声援が送られた。だが、この日いちばんの喝采を浴びたのは、楽天創設時に入団した一場靖弘(2004年/楽天自由獲得枠)だった。2006年には当時楽天のエースだった岩隈久志の出遅れもあり、開幕投手に指名された。その後もローテーション投手として名を連ねたが、結果を残すことができず、2009年シーズン直前にヤクルトへトレードされた。結局、4年間ヤクルトでプレイしたがわずか1勝に終わった。この日のトライアウトではブルペンで右足ふくらはりをつりながらもマウンドに上がり、1安打、2奪三振の好投を見せた。

「最後になるかどうかはわかりませんけど、Kスタで投げることになったのは不思議な縁を感じました。ファンの力を借りてマウンドに上がりました。結果どうこうより、力を出し切れれば良かったし、それはできたと思う。現在は肩も万全で、痛みもありません。キャンプで右肩のケガをしてフォームがばらばらになっちゃって......。それで登板の機会もなく......現在は肩も万全で、痛みもありません。だから戦力外通告を受けてからトライアウトに向けた気持ちの切り替えは早かったです」

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