【プロ野球】斎藤佑樹「野球が嫌いになりそうな時期もあった」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

―― やっぱり、進むことさえためらった自分がいたということですか。

「そうですね。本当に自分が前へ進んでいるのかなと不安に思いましたし、かといって後ろに下がっているのかどうかもわからない。自分がどういう方向に進みたいのか、みんなは自分にどういうふうになってほしいと思っているのか。いろんな角度から自分を見つめましたし、客観的に見ることもできたと思います。 ただ、答えは出ませんでした」

── 野球人生の中でこういう挫折を、今までに味わったことはありましたか。

「去年もそんなにいい成績を残しているわけじゃないし、今年だって、挫折でも何でもない。本当にそう思います。今年は本当に考えることが多かったし、新しい経験もしました。でも、挫折という言葉が当てはまるかといえば、そうではない。この程度のことは挫折とは言えないと思います。今は、『もうちょっと苦しめ』と野球の神様が言って下さっているのかなって思っています」

── 最強の24歳になりたいとおっしゃいました。まだ半年ありますが……(笑)。

「ハイ(笑)。そのためのイメージは、自分の中には常にあるんです。そうなるために自分が何をしなきゃいけないのかを考えている時って、ワクワクします。今、イメージしているのは、パワーピッチャーの自分です。アウトコースにストレートを投げて、ファウルを打たせる。もう一球、外へ投げてまたファウルでストライクを取る。最後、スライダーが来るかなと思わせておいて、もう一球、ストレートで見逃しの三振。こういうピッチングが理想です。そのイメージはできているんです」

── プロ2年目、こうして悩んで、いろいろ考えたことが、前へ進む力になると考えられるようにはなっていますか。

「目指す場所にたどり着きたいと思ったとき、あんなに悩んでいたはずなのに、実際にたどり着いてみると何でもなかったなって、いつも思うんです。普通にやっていればできるはずなのに、目の前の壁がやけに高く見えてしまう。そんなに高くない壁なのに、その壁を前にすると、悩んで考えてしまうんですよね。越えてみれば何をしたから越えられたというものではなく、自然に、簡単に越えられる壁だったのにと、そう思います。だから、今、目の前にある壁も越えてみればたいしたことなかったなと、そう思える日が来ると思っています」

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