【プロ野球】4月首位の日本ハム。開幕投手・斎藤佑樹の波及効果 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 内村賢介がバントで送ってワンアウト2塁となり、打席に迎えたのは聖澤諒。積極性が持ち味のトップバッターは、この試合でも第1打席は初球を引っ張ってライト前ヒット、第2打席はファーストストライクでセーフティバントを試みる(ファウル)など、早いカウントから仕掛けてきていた。しかも聖澤はこの日だけでなく、前回、札幌で斎藤と対戦したときも、4打席のうち3打席まで、ファーストストライクを振ってきている。だからこそ慎重になるべき、聖澤への初球――。

 斎藤は136キロのストレートを、アウトローを狙って投げた。おそらく、狙ったところよりも少し高く浮いたのだろう。聖澤がそのボールを弾き返すと、打球は斎藤の左を抜けて、センター前に転がった。嶋が二塁からホームに還って、1-1の同点。

 通常の試合であれば、5回に1点を失って同点にされても、さしたる問題ではない。振り出しに戻っただけで、いつものように2点目を与えなければいい。ただ、この日は1点目に意味があった。斎藤は、稲葉の2000本目のヒットを決勝打にしたいという想いを背負っていた。しかし彼は、稲葉が挙げたその1点を守ることができなかった。

 もちろんこの場面、いかに聖澤が積極的な仕掛けを意識していたとはいえ、その初球をボールから入るべきだった、などという野暮なことを言うつもりはない。ストライクゾーンで勝負してきたからこそ、斎藤の今シーズンの飛躍がある。

 ただ、気になることもあった。

 それは、斎藤のフィールディングである。

 斎藤はもともと、守備の上手いピッチャーのはずだ。牽制やフィールディングでは持ち前のセンスが光る。ところが今シーズンはしばしば斎藤の右を、左を、ゴロが抜けていく。もちろん、ミスをしているわけではない。抜けて当然の当たりではあるのだが、こういう打球をグラブに当てるセンスが自らを助けてきたピッチャーを、これまでに何人も見てきた。斎藤もそのひとりだと思っているからこそ、今の打球、斎藤なら捕れたんじゃないかという無茶な結果論が頭をよぎってしまう。

  踏み出した左足に体重がしっかり乗っていれば、左側への打球には体を左に預けることができるはずだ。そして今年の斎藤は、左足にしっかり体重を乗せて投げている。ところがこの聖澤への打球に対して、斎藤は及び腰のような体勢でグラブを差し出しただけだった。試合後、その謎が解けた気がした。斎藤はこう言っていた。

「傾斜、高さ、やわらかさ、プレートの感じが全部、球場によって違います。(仙台の)マウンドは土がやわらかくて......(掘れすぎていた感じは?)ハイ、ありま した。投げて、回る感じだといいんですけど、投げて、ズレるとき、失投になります。もちろん、マウンドのせいにはできませんけど」

 投げて、回る──これは、左足の話だ。

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