【プロ野球】柔の中村剛也、剛の中田翔。大阪桐蔭高時代の恩師が語る『ふたりのホームラン王候補』

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 甲斐啓二郎、益田佑一●写真 photo by Kai Keijiro、Masuda Yuichi

昨年は本塁打王、打点王の二冠を獲得した中村剛也昨年は本塁打王、打点王の二冠を獲得した中村剛也 統一球の導入により、すっかり本塁打を目にする機会が減ったプロ野球にあって、一発を期待できるスラッガーはますます貴重になってきた。その中で、現在パ・リーグには今年のセンバツを制した大阪桐蔭高出身で、ともにチームの4番を張るふたりのスラッガーがいる。それが昨年、48本塁打を放ちパ・リーグ本塁打王に輝いた中村剛也(28歳/西武)と、今シーズンから4番を任されることになった中田翔(23歳/日本ハム)だ。

 これまでプロに23人を送り込み、今や高校球界きっての強豪校に成長した大阪桐蔭。ふたりとも3年間をここで過ごし、ともに通算80本を超えるホームランを記録したスラッガーだった。しかし、バッターとしてのタイプやバッティングの考え方には大きな違いがあった。そんなふたりを間近で指導してきた西谷浩一監督が当時の印象を語った。

「一言で言えば柔の中村、剛の中田。中村は、彼が中学の時にはじめてバッティングを見たのですが、その時に変化球を見事な打ち方でヒットにしたんです。あとで聞けば、変化球を待っていたという。そんな待ち方をする中学生はほとんどいないですから、本当に驚きました。プロではホームランか三振というイメージもありますが、僕の中では遠くへ飛ばすというより上手いバッターとういうのが一番。とにかく体の使い方が柔らかく、懐(ふところ)深く呼び込んで確実にとらえる。だから、実際には三振もしているのですが、その印象がまったくないんです」

 対して、中田はどうだったのか。

「飛距離なら文句なしに中田が上でした。ただ、力任せで持っていくタイプで、ヒットやホームランになったとしてもタイミングや芯を外された当たりが少なくなかった。フォームについても、その都度、課題を持って修正を重ねていましたが、その時はいい感じにできても、次の日になるとその形が消えている。言ったことをすぐにできる器用さはあるけど、高校時代は最後まで形が定着しなかった。本人の中に、『打つよりも投げる方が好き』というのがあったことも影響していたんでしょうね。4番打者といっても、投げる合間に4番目に打つだけという感覚だったと思いますよ(笑)」

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