【プロ野球】常設化された侍ジャパンの進むべき道は?

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 それでも、モヤモヤした想いが残るのは、なぜなのか。

 それは、このゲームが3つの意味合いを持ってしまっていたからだ。

 一つ目は、東日本大震災の復興支援という意味。
 二つ目は、常設化された侍ジャパンの初陣だったという意味。
 三つ目は、来年に迫った第3回WBCへの強化という意味(もあったと信じたい)。

 試合後の選手たちからは、この試合の意味を自分なりに考え......といった主旨のフレーズがたびたび聞こえてきた。もちろん、復興支援の意味合いを考えなかった選手はいないだろう。東日本大震災の後、世界でも抜きん出た額の180億円を超える義援金を日本に寄せてくれた台湾の代表チームを招いてのマッチアップは、復興支援のカードに相応しかったと思う。しかし選手たちは、侍ジャパンの一員となったことへの誇りと喜びについては触れたものの、WBCへの想いについては歯切れが悪かった。現時点でまだ選ばれたわけじゃないということを差し引いたとしても、それが、この試合の意味合いをハッキリさせられんかったことの表れだったのではないかと思う。

 重要なのは、第3回WBCについて、日本がまだ参加することをMLB側に公式には伝えていないというところだ。日本プロ野球選手会が、日本代表チームのスポンサー権、代表グッズのライセンシング権を参加国に帰属(きぞく)させるべきだと訴えているため、出場に関しては、まだ国内での最終合意に達していないのである。しかし昨年の12月、NPBとしてはオーナー会議を経て正式に参加を表明。その直後、国際野球連盟がWBCを世界一決定戦として公認することを発表するなど、第3回WBCに日本が参加しないことは考えにくい状況になっている。それでも選手たちにとってはまだ、WBCありきの侍ジャパンではない。NPBも「代表の常設化は以前からの課題で、WBCとは別のもの」と説明している。加藤良三コミッショナーは「選手に喜び、子どもに目標と夢を与え、競技人口の確保、拡大を図るため」といった狙いを語り、オーナー会議の議長を務めた楽天の島田亨オーナーは、「日本代表についてはスポンサーも募り、長期的な運営、管理をする」と話していた。つまりは、侍ジャパンの常設はWBCとは関係なく、その収益をNPBの財源に充てたいという狙いがあるということになる。

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