Baseballプロ野球

[2012年02月23日(木)]

【プロ野球】韓国で2度の三冠王、李大浩の実力は本物か?

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 荒川祐史●写真 photo by Arakawa Yuji

昨年も打率.357をマークし、2年連続の首位打者を獲得した李大浩「なかなか良い打者だねぇ。さすが三冠王を二度も獲っただけのことはあるよ」

 そうコメントするのは横浜の田中彰スコアラーだ。「数打席を見ただけだけど」と前置きしつつも、「スイングの柔らかさが印象的。なかなか崩せないね」と評価した。その打者とは、今季オリックスに新加入した李大浩(イ・デホ)、29歳だ。

 韓国プロ野球では2006年、2010年と2度の三冠王に輝き、2008年の北京五輪では日本戦で和田毅(当時ソフトバンク)から痛烈な2点本塁打を放つなど、金メダルにも貢献した。身長194センチ、体重130キロ。年俸も2年総額5億円と、どれをとってもケタ外れのスラッガーである。はたして李大浩は日本でどんな活躍を見せてくれるのだろうか。

 これまで韓国球界から日本にやって来た打者の多くは、その真価を発揮できぬまま日本を去っていった。李承燁(イ・スンヨプ)しかり、金泰均(キム・テギュン)しかりである。なぜ、彼らは日本で思うような活躍を果たせなかったのか。あるパ・リーグ球団のスコアラーは次のように言う。

「李承燁も金泰均も、失敗した共通点は日本の投手の攻め方に翻弄(ほんろう)され、自分のバッティングを見失ってしまったこと。内角攻めにナーバスになり、外角のボールがまったく見えなくなってしまった。それに緩急や落ちる系の球種にも対応できなかった」

 端的な例がフォークやチェンジアップだ。韓国のほとんどの打者は”目付け”が早く、手元で落ちるとわかっていても、投手の手を離れた瞬間、反射的にストレートと錯覚して手を出してしまう。前出のスコアラーは続ける。

「内角攻めは外国人の強打者に対しては”お約束”の攻め方ですが、李承燁や金泰均にはとくに効果があった。一球見せておけば、もうストライクゾーンで勝負する必要がないくらい、ボール球でも手を出してくれていた。自分で勝手に崩れてくれたんです」

 では、李大浩も彼らと同様に日本でのめざましい活躍は見込めないのだろうか。関係者の意見を拾っていくと、評価は真っ二つに分かれる。

 まず、「成功する」という関係者は、冒頭の田中スコアラーのように、李大浩の柔らかいスイングが李承燁や金泰均との大きな違いだと言う。あるセ・リーグの球団関係者は次のように語る。

「体は大きいけど、バットが体に巻きつくような柔らかいスイングなんですよね。それもインサイドアウトで出てくるから、内角もあまり苦にならない気がします。たとえヒットにはならなくても、ファウルで逃げる技術があれば、バッテリーにとっては内角攻めのメリットがなくなってしまう。それでいてリーチはあるから、外角にも対応できる。韓国で三冠王を2度も獲ったということは、パワーだけでなく率も残せる巧打者でもあるからでしょう。日本でも相応の成績は残すと思いますよ」

 それとまったく同じ見方をしているのが、自軍の将である岡田彰布監督だ。「バットコントロールは抜群。これが本物の4番打者よ」と絶賛。もちろん、巧さだけでなく、芯でとらえればそれだけでスタンドに運べるパワーも兼ね備えており、岡田監督が大きな期待を寄せるもの無理はない。

 その一方で、「難しいのでは」という声もある。別のパ・リーグチームのスコアラーは次のように指摘する。

「たしかに李大浩は李承燁や金泰均より穴は少ないかもしれない。しかし、日本の投手は力勝負ではなく、相手打者の力を出させない”かわすテクニック”は世界一ですからね。長打を防ぐために、四球もヒットも同じと考えボール先行の投球を徹底すれば、必ず外国人打者は苛ついて悪球でも手を出してくる。李大浩もそのパターンだと思いますけどね」

 さらに、こんな声もある。別のセ・リーグ球団のスコアラーは言う。

「見る限り、両サイドの揺さぶりより、高低に脆さがある気がしますね。高めを意識させてのフォークなど、ハーフスイングで空振り三振といったイメージが浮かびます。日本では、欠点が見つかれば、他チームも揃って同じ攻め方をしてくる。そうした徹底さに、どれだけストレスを溜めず自分の打撃を維持できるかどうか。三冠王を二度も獲っているぶんプライドも相当高いだろうから、一度、スランブにはまったら、そう簡単には抜け出せないでしょう」

 また、「李大浩の活躍のカギを握るのは、5番候補のT-岡田」と語るのは、別のパ・リーグの球団関係者だ。

「T-岡田が好調なら李大浩と勝負しなければならないけど、そうでなければ無理に勝負する必要はなくなる。そこでボール主体の投球をすれば、苛立ってボール球でも打ちにくると思います」

 はたして韓国プロ野球で2度の三冠王を獲得した実力は本物なのか、それともこれまで韓国の強打者を苦しめたように再び日本の投手陣が立ちはだかるのか、シーズンでの戦いが待ち遠しい。

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