【プロ野球】阪神・伊藤隼太の最大の才能はプロの練習に耐えられる体の強さだ (2ページ目)
これまで才能があってもケガによって挫折した選手は数多くいます。ケガそのものが致命傷になる選手もいますし、ケガによって満足のいく練習ができなくなりパフォーマンスを落とす選手もいる。特にプロは朝から晩まで野球漬けの毎日を過ごします。ケガが多い選手とケガの少ない選手とでは、それだけ練習量が違ってくる。プロは中身の濃い練習をしますので、これは大きな差になります。
伊藤はケガも少ないですし、きつい練習に耐えられる体力もある。普通にやれば、即戦力としてやっていけると私は思っています。あとは、いかにしてプロのスピードと質に慣れていくのかが課題でしょうね。
アマチュア時代は「来た!」と思ってから振っても、ある程度は対応できていたと思います。しかし、プロでは「来た!」と思って振っても間に合わない。それだけキレが違うということです。それに一軍で活躍するピッチャーはコントロールが素晴らしい。ピンポイントで攻めてきますからね。
昨年、オリックスの高卒ルーキー・駿太がキャンプ、オープン戦で活躍し、開幕一軍を勝ち取りました。しかし、シーズンに入るとまったく打てなくなり、結局、二軍に落とされてしまいました。なぜ駿太が打てなくなったのか? プロの世界は、選手だけでなくスコアラーも超一流です。まずルーキーに対して、オープン戦で得意コースや球種、苦手コースなどを分析し、弱点を洗い出す。駿太の場合も弱点がインコースだとわかると、シーズンに入ってから徹底してそこを攻められた。それもオープン戦とは比較にならないぐらい厳しい球を投げられるわけです。伊藤も同じような経験をするでしょう。その時にどう自分なりに対応していくのか、私は注目しています。
最後に、伊藤に限らずルーキー全員に言いたいのですが、プロには多くのコーチがいます。もちろん、選手たちのことを思ってアドバイスをくれると思うのですが、なんでもかんでもコーチの言う通りにしなくてもいいということです。例えばですが、あるコーチは「ポイントを前にして打て」と言い、もうひとりのコーチは「ポイントは後ろにしろ」と言う。これは極端な例ですが、プロはコーチによって指導法が違ったりすることがよくある。つまり、自分に合うのは何かということを、自分で判断しないといけない。たとえ結果が出なかったとしても、自分の長所はなんなのかを忘れてほしくないですね。
著者プロフィール
石山建一 (いしやま・けんいち)
1942年、静岡県生まれ。現役時代は静岡高、早稲田大、日本石油で活躍し、現役引退後は早稲田大、プリンスホテル、全日本の監督を務め、岡田彰布(現オリックス監督)、宮本慎也(ヤクルト)など、多くの名プレイヤーを育て上げた。95年には巨人に招聘され、編成本部長補佐兼二軍統括ディレクターに就任。現在は高校野球の指導や講演を中心に全国を飛び回っている。
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