井上尚弥のPFP1位は週明けにも終了? ウシク、クロフォードとの超ハイレベルなトップ争い

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

【井上がクロフォードを上回った理由】

「リング誌のPFP1に返り咲きました 皆さんの応援のおかげです!! いつも応援ありがとうございます」

 井上尚弥(大橋)がSNS上で残したそんな言葉が、パウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングでトップに立つことの意味と価値を物語っている。

ネリを下してPFP1位に返り咲いた井上尚弥 photo by 北川直樹ネリを下してPFP1位に返り咲いた井上尚弥 photo by 北川直樹この記事に関連する写真を見る

 アメリカ最大手の『リングマガジン』は5月9日、全階級を通じて最も優秀なボクサーを選出するPFPランキングを更新。同6日に東京ドームで行なわれた世界スーパーバンタム級4冠の防衛戦で、ルイス・ネリ(メキシコ)を6回KO で粉砕した勝利が評価され、"モンスター"は約2年ぶりにランキングのトップに立った。

 2019年秋以降、同ランキングの選定委員(パネリスト)を務める筆者も「井上が1位になるべきだ」と考えた。チェーンメールで行なわれる選考会議中、スーパーライト級、ウェルター級の4団体統一王者テレンス・クロフォード(アメリカ)よりも井上が上にいくべき理由として、こう主張した。

「去年の7月、クロフォードをわずかに井上の上に据えたが、以降、クロフォードは一度も試合をしていない(8月に次戦が決まったが)。その間、井上は質の高い相手に2度も勝利した。井上を昇格させる十分な理由だ。アクティビティ(試合頻度)に感謝したい」

 いまだに勘違いされがちだが、PFPは「体重が同一と仮定したら誰が一番強いかを決めるランキング」ではなく、「全階級を通じて誰が最も優秀なボクサーであるかを、経歴と表層状の戦力評価で定めるランキング」である。

 いわばレジュメの比べ合い。スポーツは常に相手次第であり、どれだけ強い勝ち方をしても、対戦相手の質が伴わなければ基本的に高評価はされない。ランキングの上位を守るためには、定期的に上質な勝ち星を重ねる必要もある。米スポーツ特有の「What have you done lately(最近何をやったのか)」はPFP選考でも重視される傾向にあり、最新の勝ち星はもちろん重要である。

 昨年7月、エロール・スペンスJr.(アメリカ)との"PFPトップ5対決"で完勝したクロフォードのパーフェクトなボクシングは見事だった。その時点では、直前に無敗のスティーブン・フルトン(アメリカ)を蹴散らした井上よりも、クロフォードを上に据えるという判断に誰もが納得しただろう。

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