パリ五輪出場全チームを解剖 アンリのフランスはエムバペの出場をあきらめていない

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

五輪代表のライバルたち(後編)

 続いては開催国フランスの入ったグループA。

 フランスが五輪でメダルをとったのは、1984年のロサンゼルス五輪のただ一度だけ。今回は開催国の威信をかけて、何が何でも優勝したいと考えている。そのことはテクニカルスタッフの人選からもよくわかる。

 監督にはティエリ・アンリ(元アーセナル、バルセロナなど)、副監督にガエル・クリシー(元アーセナル、マンチェスター・シティなど)、その他のコーチたちも名だたるチームの選手だった者ばかりだ。

 フランスはオーバーエイジ(OA)にもビッグネームを呼ぼうと企んでいる。元フランス代表で固めたコーチたちの存在は、彼らを呼びやすくしているだろう。一番可能性が高いと言われているのはウーゴ・ロリス(ロサンゼルスFC)、ラファエル・ヴァラン(マンチェスター・ユナイテッド)、そしてキリアン・エムバペだ。

金メダル最有力候補と言われるパリ五輪フランス代表を率いるティエリ・アンリ photo by Getty Images金メダル最有力候補と言われるパリ五輪フランス代表を率いるティエリ・アンリ photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 五輪の前にはユーロもあるのだが、オリンピック委員会はどうしてもエムバペを呼びたいと考えている。ただし五輪はFIFAの主催でなく、クラブチームに対する強制力はない。彼がパリ・サンジェルマン(PSG)に所属している分にはまだ無理もきいただろうが、先日、退団を発表。移籍後となると、そのチームとの交渉が重要になる。

 そのためエマニュエル・マクロン大統領も直々に介入、「エムバペの新天地に圧をかける」と公表している。OA候補には他にもオリヴィエ・ジルー(ミラン)、アントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード)、アドリアン・ラビオ(ユベントス)やカリム・ベンゼマ(アル・イテハド)の名前が挙がっている。

 ただしOAの力を借りなくともフランスの若い世代にはすでに逸材がそろっている。レアル・マドリードのエドゥアルド・カマヴィンガ、PSGのブラッドレー・バルコラ、ウォーレン・ザイール=エメリ......。とにかくフランスは最有力金メダル候補だろう。

 同組のアメリカは五輪サッカーにおいては常連国だが、今回はその実力に若干の疑いが残る。2022年のCONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)U-20選手権で活躍し、チームを優勝に導きMVPとなったパクステン・アーロンソン(フランクフルト)などの新鋭もいるが、OAにはチームをけん引できるようなスターはいない。監督のマルコ・ミトロビッチはこれまでさほど大きな功績を残してはいない。彼が勝利に必要なスピリットをチームに与えるのはなかなか難しそうだ。フランスに比べるとモチベーションも低く、2位通過狙いだろう。

 ニュージーランドがグループステージを突破するのは難しいはずだ。最後に滑り込んだギニアも、56年ぶりの五輪出場は快挙だが、勝ち目はないのではないか。

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